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誕生・出産を全否定する“反出生主義”が間違っている7つの理由。「なぜ貧乏なのに僕を産んだの?」にどう答えるか=午堂登紀雄

間違っている理由その7:「生き方を選べる」のが最大の民主主義

結局「反出生主義」は、そう思う本人だけがそうすればいいだけで、他人に押し付ける性格のものではない、というのが私の率直な感想です。

私個人は自分の生き方について他人からの干渉を徹底的に排除したいと思っています。そのため、生き方を自分で自由に選べる民主主義国家である日本は素晴らしいと思っています。

コロナでもロックダウンといった厳しい外出制限が行われないのも、一国の宰相をコケにする発言をしても逮捕されないのも、日本は世界でもトップクラスで人権・主権・私権が保護されているからです。

たとえば「ヴィーガン」という菜食主義者がいますが、これもやはり本人がそういう生き方を選ぶのは自由です。しかし私が彼らを好きになれないのは、それを周囲にも押し付け、自分とは違う他人を否定する言動をする人が少なくないためです。「健康のために菜食中心にしてます」程度ならいいのですが、「動物を殺すのはエゴだ、生命の軽視だ」などと肉食を否定するから胡散臭く感じます(そもそも植物も生命のひとつですよね?)。

彼らは自分の正義が正しく、その正義を周囲も実現するべきだという思い込みがあるのでしょう。しかし正義なんてひとりひとり違いますし、そもそも客観的な正義などありません。ほとんどの場合は「自分にとって都合が良いこと」が正義なのですから。

同様に、子を持つ持たないのは本人の自由なのに、「全ての人間は子を産むべきではない」などとその人の正義を他人に押し付けようという圧力を感じるから、余計に胡散臭さが増します。というか「他人を道連れにして自殺したい人」のような、ちょっと危うさすら感じます。

そういえば「正義という剣を振るってもいい人の定義」を、あるアニメで見たことがあります。「自分の正義を他人に押し付ける傲慢さへの自覚、自分の正義を実現させるだけの力と能力、自分の正義が周囲を幸せにするという信念、自分の正義を貫いた結果の責任を取る覚悟、これらをすべて満たせる人だ」なるほど……。

そしてここでハタと気が付きます。「自分の考えを他人に押し付けるな」という押し付けをしている自分に(笑)。壮大な自己矛盾劇場でしたね。

子どもから「産んでくれと頼んだ覚えはない!」と言われたら

話はちょっと変わりますが、反抗期を迎えた子が、親子ゲンカのときに「産んでくれと頼んだ覚えはない!」というものがあります。

これを言われたらたいていの親はショックを受けると思いますが、これで親が動揺してオロオロたり、反対に「親に向かってその口のきき方はなんだ!」「誰が養ってると思ってるんだ!」などと怒りをあらわにすれば、かえって逆効果です。前者の反応をすれば子は親を見下すし、後者の反応をすれば子はふてくされるだけ。

それこそ親が逆ギレし、「あんたなんて産むんじゃなかった」「こっちだって頼んだ覚えはない」などと言おうものなら、子の自尊心は大きく傷つき、その後の人生に悪影響を与えかねません。

とはいえ、理論的に考えても生まれる前に親に頼める人なんていないわけで、「産んで」と頼むことも「産まないで」と頼むことも現実には不可能なわけです。

実際、「それじゃ逆に聞くけど、親に頼んで生まれてきた人っている?」「どうすれば生まれる前に産んでとか産むなと親に頼めるの?その方法を教えて」と反論してみても、イヤミぐらいの効果しかないでしょう。

あるいは、「じゃあ、どうしたら生まれてきて良かったって思える?パパとママが家を出ていくこと?パパとママが死んだ方が幸せ?」などと強迫してみる感じでしょうか。

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