1,000万円を貯めるのに、どれくらいの年月が必要か
「65歳までに1,000万円の貯金があれば貯められた方だ」と言われるようになっているのは、2015年の「家計の金融行動に関する世論調査」で、金融資産保有額の平均が1,209万円だったことからも分かる。
しかし、非正規雇用の人たち、低賃金の仕事に就いている人たち、年々賃金が下がる傾向にある人たちにとって「平均」の1,000万円を貯めるということすらも容易なことではない。
容易なことではないが、何もしないわけにはいかないので、着実に貯蓄して1000万円の貯金に向かうとすれば、どれくらいの歳月が必要なのだろうか。
それを計算すると、とても残酷な事実が浮かび上がる。
仮にまったく生活に余裕がなくて月1万円の貯金でも精一杯であるとする。この人は月1万円で貯金を初めて1,000万円を貯めるには、どれくらいの年月が必要なのか。
それは約83年である。
仮に20歳で1,000万円を目指して月1万円の貯金を開始したとしても、それが貯まるのは103歳までかかるということだ。人間の寿命を考えると、月1万円の貯金で1,000万円を見るのは不可能であると言える。
では、月2万円ではどうなのか。月2万円では、1,000万円到達するのに42年かかる。
20歳で月2万円を堅実に貯めていくと、ちょうど自分が高齢層に入る頃は1,000万円が実現できている。もちろん、何があっても貯金を継続するという強い鉄の意志が必要だが、絶対に不可能というわけではない。
それができた人が「65歳までに1,000万円」に到達しているということになる。月3万円が貯金できる人は28年で1,000万円に到達する。月4万円貯金できる人は21年で1,000万円に到達する。
日本人の貧困化は加速している
不安定な労働環境や低賃金の状況の中で、月に4万円も貯金できる人がいたら大したものだ。そんな人は、なかなか見当たらないかもしれない。
そもそも、月2万円という無理のない貯金であっても、リストラや長い無職期間があればもう頓挫する。
多くの人が1,000万円に到達しないのは、ある程度の金額が貯まれば緊張の糸が切れて途中で貯金を下ろしてしまったり、あるいはどうしようもない不可抗力で下ろさざるを得ない状況に追い込まれたりするからだ。
そんなわけで、高齢者と呼ばれる65歳に到達した時に1,000万円に到達していない人が増え、仮に1,000万円に到達しても80歳まではとても足らず、日本人がどんどん貧困化していくような社会が到来した。
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