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次期首相の敵はインフレ。2022年、オイルショック級の物価上昇が日本と世界を襲う=吉田繁治

2022年のインフレ予想

経済の未来は、複雑であり確率的なものです。2021年冬にコロナ第6波が起こると、2022年の「高いインフレ率(20%か?)」となる確率は高まるでしょう。

コロナ危機に対して、すでに世界中でマネーが増発され、政府の財政支出は拡大されています。70%の人の所得は減っても、社会のマネーは十分にあり(預金の増加になっています)、需要力は大きい。

この点を考えると、FRBが「物価上昇は短期的」と断じたのは、机上論の認識間違いになります。

過去のように、戦争で工場が破壊された後のハイパーインフレまでは行かないでしょう。しかし石油危機(1973年と79年)並みのインフレは、相当な確率(70%)で想定できるでしょう。

コンテナ料金の長期高騰(事実)は、インフレに6か月先行する指標になるものです。世界のエコノミストは、国際コンテナ料金の長期高騰に気がついていません。

世界の自動車需要が増えている中での、トヨタの生産40%減の意味も、それ以外の産業領域で広範囲であることを解いていないのです。

インフレの本質は、物価上昇の形をとった「過剰になった信用通貨の価値の下落(マネーサプライの残高 × 流通速度 = マネー量)」です。

相対的な、通貨ペアのレートでは信用通貨の価値下落はわからない(ドル/円)。両方が下がれば同じレートだからです。通貨価値の下落は高騰した物価との関係で分かります。

20年間の「ディスインフレ」が一変する

21世紀の20年は、世界的なディスインフレの時代でした。通貨が下落した国で輸入物価が上がり、インフレになるだけだったのです。

ディスインフレとは、価格が下がるデフレではなく、物価上昇が0%から1%付近と低い経済の状態を言います。米国の物価上昇もコロナ前は1%台と低かった。

この世界的な原因は、中国とアジアでの、出荷価格3分の1くらいの商品生産が増えたことです。この生産量は、世界の50%に増えているでしょう。中国とアジアは内需主導型ではなく、輸出主導型経済です。

たとえばマレーシアのGDPに占める輸出額は、69%と、異常なくらい高い。日米欧のメーカーが、工場を作って、現地人を雇用し、輸出しているからです。部品は他国から調達します。

中国と東南アジアの産業構造がこれです。約20年で、世界中に、網の目のサプライチェーン物流網が築かれたのです。

通信はインターネットとスマホ、物流はコンテナ。世界中で国内の価格が上がると、中国・アジア輸入が有利になるので、2000年代の20年間、企業が価格を上げることができないディスインフレの経済構造になっていたのです。

Next: 迫る供給ショック。次期首相は「インフレ」と戦うことになる

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