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なぜ日本は高圧送電線が多いのか?「電力会社を殺すか殺されるか」の段階に入った地球温暖化の現実=田中優

送電ロスの大きい高圧送電線は日本に合わない

要は小さな電気から集めて電気を届けるのに、高圧送電線の仕組みは合わないのだ。ちょっと以下の図を見てほしい。

これは日本で最初にオフグリッド(高圧送電線網=グリッドから離れること)を提唱した慧通信技術工業の粟田さんが、同社の開発したエコワンソーラーのホームページに示したグラフだ。

左の円グラフは家庭の用途別のエネルギー消費量を示し、給湯のエネルギー消費だけで30%を占めることを示している。エネルギーというと電気ばかり考えがちだが、実は熱として使う部分も少なからずあるのだ。特に風呂が好きな日本人にとっては。

熱を電気で作るのは効率が悪いが例外がある。それがヒートポンプを利用した場合だ。そのヒートポンプを使って熱を自給する試みがエコワンソーラーの仕組みであるのだ。

そして図の右側を見てほしい。電気にした場合の家庭に届くまでの熱効率が描かれている。実に化石燃料の63%が排熱や送電ロスに消えてしまい、37%しか届いていない。発電時のロスは特に原子力に大きく、熱の内の3割程度しか電気になっていない。放射能と隔離しなければならないため、発電ロスが大きくならざるを得ないのだ。

そして負けず劣らず送電ロスも大きい。高圧で送電すればロスも少なくなるのだが、家庭のような小さな電気を供給するには低圧にせざるを得ない。特に自然エネルギーの電気では、低圧の電気で拾い集めるため、ロスは極めて大きくなる。各地で作られる自然エネルギーの電気は、ロスとして消えてしまうのだ。

するとそうしたグリッドシステムに頼るガス火力発電所に投資しても、資金回収が終わる20年間に取り戻すことができるだろうか。自然エネルギーは低圧のため、送電線でロスが大きい。

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上図に示したように、100Vの低圧線に送られた電気は、50万Vの高圧線と比べて、実に2億倍もロスするのだ。「超」がつくほどの高圧線で電気を送るのは、この送電ロスで消えてしまうのを恐れるためだ。逆に家庭で作ったつもりの自然エネルギーの電気は、高圧線に入って送られる前にほとんど消えている。

「再生可能エネルギー促進賦課金」は自然エネルギー設備を設置した人を喜ばせるための高額買取制度で、その実自然エネルギー設備の普及にはほとんど役立っていないのだ。

せいぜいが、設備を設置した人の家の近隣に電気が届くだけのことだが、むしろその電気の電流・電圧が電力会社からの送電より不安定であるため、家庭の電化製品などに悪影響を及ぼす可能性がある。

それを安定した電気にして送電するためには、バッテリーなどに蓄電して整えてから送電した方がいい。大規模に自然エネルギーの電気で電気を供給するなど、グリッドを前提にしたならできない相談なのだ。

Next: 日本のエネルギー政策は周回遅れ。発電所はすぐに「座礁資産」となる

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