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「岸田内閣を売った」海外勢。総選挙の株高アノマリーは不発、11月から日経平均はどう動く?=山崎和邦

再び「1億総中流」を目指す岸田政権

成長なければ分配なし、成長と分配の好循環……岸田総裁の主張はこうである。

これはどういうことが言えるかというと、本稿でかねがね言っているキャッシュリッチの日本人の株式投資に占める比率が先進国の中で最も低い。この状況に地殻変動を起こすことが必要だということを述べてきた。ちなみに外国の株式・投信に占める個人金融資産の比率は米51%、ユーロ圏27%、日本14.3%であり、圧倒的に低い。

ところで、日本の約2,000兆円あるうちの1,000兆円が現預金だという。この1,000兆円の現預金の10%でも株式市場に流入したとすれば、100兆円になる。ちなみに、アベノミクス期間に外国勢の買い越し金額は、累計23兆円である。個人金融資産の現預金部分の10%で100兆円である。ところが、個人金融資産の大半は老年層が持っている。

老年層は今から株式や投信に比重を移そうとは思わないだろう。したがって、岸田総裁候補の言う通り「分厚い中間層」が動かなければならなくなる。

小泉元首相は「貯蓄から投資へ」ということをスローガンとしては盛んに言っていた。郵政民営化はそのためではない。日本版401kを充実させるとか、GPIFの運営を充実させるとか、そういうことには手を付けなかった。

言わば、気合倒れに終わった。これは情報の集積も、知能も、政治家よりも高いはずの官僚とともに新内閣は長期的に考えていくべきだと思う。中間層が多くなると革命がない。超金持ちと超貧乏な国が革命を起こす。日本に革命がないのは、何と言っても中間層が多かったからだ。

1980年代には「1億総中流」という言葉が流行った。これは揶揄して言われたことであるが、筆者はその頃から1億総中流という意識は、戦後日本の民主主義下に於ける市場経済の輝ける成果であると筆者は思っていた。

1億総中流と思い込んでいる時には、金持ちに対する怨嗟はない。革命は起こらない。ロシア帝国のように、超富豪と超貧乏がはっきり分かれた時に革命が起こる。

岸田新総裁は総裁候補の頃からそのことについては一切述べていないが「分厚い中間層に巡っていくような令和版高度成長を考えると言い、池田版の高度成長の話を出し、小泉竹中ラインの新自由主義で格差が広がった話を出してそれを転向すると言い、目指すところは成長と分配の好循環という。

このことは、再び「1億総中流」を作ろうということであろう。

個人金融資産の現預金部分の10%が株式に移行してユーロ圏内と同じ比率になれば、100兆円が流入することになる。アベノミクスの期間に海外投資家からの流入が純増23兆円だったから、それの4倍以上ということになる。本当の地殻変動はここから起こる。個人金融資産の半分が現金で置いてあるという点、それをどのように呼び込み成長に繋げるかということだ。

成長と分配の好循環というが、その一つの方法はこれであろう。経済学上、貯蓄はSという記号で方程式が組まれるが、これがGDPの流れから漏れ出てしまったもので生産を生まない。経済学上、漏出という。これが投資に戻った時に初めてGDPに加わるのだ。これを理論立てたのがJ.R.ヒックスの景気循環理論である。

日経平均、強気派と慎重派の意見

ここから日経平均はどう動くか?

日経ヴェリタス紙が市場関係者10人に今後の展望を訊いたところ、高値予想は平均で3万1,400円だった。一方、安値平均は2万7,000円弱だった。足元の水準を底にして、年末にかけて3万円を上回るという見方が浮かび上がってきた。

10人のうち日本株に最も弱気な見方を示すのが、智剣・Oskarグループである。6日までの急落時の水準で2万7,000円台を中心に上下2,000円程度の値幅を予想している。この慎重筋は、自民党総裁選で自民党が勝てば逆に金融所得増税の議論が進むから、岸田政権の所得再分配を重視して株は下がると言っている。10月末の総選挙で自民党が勝利すれば株高につながるという期待が強いが、仮に大勝すれば、その勢いで増税に振り切りかねないから喜べないという。

万年強気傾向である大和証券の木野内栄治氏の意見は米国に向かっていて、米国のキャピタルゲイン増税の議論が進んでいることを挙げている。米国の売り越し額が9月は3割に達したという(米人による米国株の売りである)。税率引き上げが適用される前に利益確定してしまおうという思惑ではないかと思う。

フィデリティ投信は4~9月期の増益期待が高い一方で、供給網の停滞による不透明感が漂うが、東南アジア等でコロナの新規感染者数がピークアウトするなど最悪期は脱している印象だから、決算発表で先行きの安心感が確認できれば、相場は押し上げられるだろうと言う。

以上は市場関係者の意見の要約であるが、私事にわたるが筆者のポジションに付言したい。

Next: 私事にわたるが筆者の現在のポジションを公開する

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