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習近平の富裕層叩きはポーズだけ。不動産危機で「共同富裕」30年先送り、金持ち超優遇社会は崩れない=勝又壽良

中国は固定資産税・相続税が存在しない「金持ち超優遇」社会である。習近平は「共同富裕」を掲げて国民の不満の矛先を変えてきたが、その実現を30年後へ先送りした。不平等は解消されず、国力はどんどん減退している。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

【関連】2030年代に中国は分裂する。不動産バブル崩壊・電力不足・統制経済の三重苦で習近平体制は「終わりの始まり」へ=澤田聖陽

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年10月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国は「金持ち」を超優遇する国

中国は、金持ちを超優遇する国である。

具体的には所得分配の不平等性を示す「ジニ係数」の高さで証明されている。恒常的に「0.4台後半」で、いつ社会騒乱が起って不思議のない状態である。中国全土に監視カメラが設置されている理由は、国民を監視しなければ国家を維持できないほどの不平等状態に陥っている結果だ。

ジニ係数で言えば、米国は「0.39」(2018年)である。日本は「0.33」、フランス「0.30」である。いずれも、0.3台に止まっている。ジニ係数は、値が低いほど良い状態と定義づけられている。

中国が、社会主義を標榜しながらこの高いジニ係数であるのは、一度も選挙がない結果だ。反乱さえ防げば、政権維持にあたっての懸念はない。こういう政治状況が、権力者を増長させて恣意的な政治を可能にさせる仕組みを維持させている。

「共同富裕論」で国民の怒りの矛先を変える策

中国は、政権交代論を「謀反」と位置づけている。全土に張り巡らした監視カメラで、そういう謀反の芽を摘んでいるのだ。

共産党に都合のいい仕組みを考案しているが、それにも限界がある。現状がその危機状態にあるので、習近平氏は国民の怒りの矛先を「共同富裕論」を持ち出してかわそうとしている。

その希望の星であるべき「共同富裕」は、習氏の最新論文(共産党理論誌『求是』に掲載)によれば、2050年頃になるというのだ。

「土地錬金術」から経済の破綻へ

7月以降、あれだけ矢継ぎ早に「共同富裕論」に繋がる規制策を実施してきたが、ここで急ブレーキが掛かった形になったのはなぜか。中国の経済改革で、最大の難問である「不動産問題」に突き当たった結果であろう。

習氏は最近、出生率を急低下させている要因として、次の点を上げてきた。

1. 教育費の値上り抑制で学習塾を廃止する
2. パソコン・ゲームの費用を削減する
3. 住宅価格の高騰を抑制すべく、不動産開発企業の負債依存経営を規制する

前記の項目中で、(1)や(2)は問題なく実施できても、(3)の不動産開発企業の経営規制は、しだいに簡単でないことが明らかになってきた。

それは、中国経済(GDP)の4分の1が、不動産開発関連であることで、とりわけ地方政府の財源収入では大きなウエイトを占めている。不動産開発を抑制すれば、土地払い下げ需要が減って、地方政府の財源が自動的に減少するのである。中国の税制では、この土地売却収入が従来、地方税収の5割強を占めていた。去年は3割程度とされている。この隠れた要因を習氏は見落としていたのである。

私は、地方政府が不動産バブルに深く関わっていることを繰り返し指摘してきた。地方政府は、財源を作るうえで土地売却収入が不可欠な手段である以上、恒常的に地価引き上げに走る公算が大きいことを突いてきた。この状態が改まらない以上、中国の不動産バブル継続は不可避であると指摘したもので、このまやかしが現在、破綻しようとしているのだ。

地方政府は、土地を錬金術に使ってきた咎めに直面している。古代エジプト以来、「錬金術」は人間の悪夢として試みられ失敗してきた。中国は、土地を「通貨」代わりに利用して、今や大失敗したのである。それは、後述のように税制を根本的に歪め、所得の不平等性(「ジニ係数」)を高めたのである。

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