米国と中国の6つの最先端テクノロジーを比較したハーバード大学の最新レポートによると、ほとんどの分野で中国がリードしているという。2030年代には中国の技術が世界標準となるのは間違いないだろう。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年12月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
中国の圧勝!? 米中テクノロジー対決の実態
ハーバード大学の最新レポートから明らかになった、米中の最先端テクノロジーの対決についてご紹介したい。これを読むと意外な実態が見えてくる。
日本ではほとんど報道されなかったが、2カ月前の10月12日、米国防総省のサイバーセキュリティの最高責任者で、米空軍の初代チーフ・ソフトウェア・オフィサーを務めたニコラ・シャイアンが、国防総省のポストを辞任した。米軍の技術革新のペースが遅いことへの抗議と、中国がアメリカを追い越すのを見ていられないというのが理由だった。
シャイアンは英大手経済紙の「フィナンシャル・タイムズ紙」に対し、中国のサイバー攻撃やその他の脅威にアメリカが対応できないことで、自分の子どもたちの将来が危険にさらされていると語った。シャイアンによると、北京が世界的な支配に向かっているのは、人工知能、機械学習、サイバー能力が進歩しているからで、これらの新しい技術は、F-35戦闘機のような大予算の第5世代戦闘機のようなハードウェアよりも、アメリカの将来にとってはるかに重要であると主張した。
そして、「15年後、20年後の中国に対して、我々が対抗できる戦闘力はありません。今のところ、それはすでに決まっていることです」と述べた。さらに同氏は、「戦争が必要になるかどうかは、一種の逸話です」と言い、「中国が世界の未来を支配し、メディアのシナリオから地政学まであらゆるものを支配するようになる」と主張した。また、アメリカのサイバー防衛力は、一部の政府機関では「幼稚園レベル」であるとも批判した。
国防総省におけるサイバーセキュリティの最高責任者だった人物のこうした発言は、大きな驚きをもって受け取られた。中国の最先端テクノロジーが急速に発展していることは広く知られていたが、まだ多くの分野でアメリカが優位性を維持していると信じられているからだ。それというのも、中国のテクノロジーについてはさまざまな情報が断片的に報道されることが多く、主要な最先端分野の発展状況を包括的にまとめた報道が少ないことが背景にある。
信頼性の高い「ハーバード・ケネディ・スクール」レポート
そうした状況で、公共政策と外交政策の世界最高の研究・教育機関である「ハーバード・ケネディ・スクール」は、「The Great Tech Rivalry: China vs the US(偉大なテクノロジーのライバル:中国対アメリカ)」という題名のレポートを12月に発表した。
これは、中国とアメリカの最先端テクノロジーの発展をAI、5G、量子情報科学、半導体、バイオテクノロジー、グリーンエネルギーの6つの分野で包括的に比較したレポートである。米中の最先端テクノロジーの発展が、広い分野にわたって俯瞰できる内容になっている。
中心的な執筆者は、「ハーバード・ケネディ・スクール」のグラハム・アリソン教授である。アリソンは国防次官補だった人物で、アメリカを代表する外交政策の専門家だ。世界的ベストセラーとなった「Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?」の著者でもある。
しかし、このレポートの特筆すべき特徴は、その監修者のリストである。