ソニーブランドなら高い値付けも可能
もちろん電池の価格が飛躍的に下がれば話は変わってくるかもしれませんが、10~15年の期間で可能かと言えば、まだ疑問符が付く状態でしょう。
また、EVは走行距離の問題もあり、現状ではフル充電してもガソリン車の半分ぐらいの距離しか走れません。
ガソリン車並みの走行距離を達成するには、リチウムイオン電池を高性能化するか(サムスン、日立などがすでに発表しています)、全固体電池など次世代技術が普及することが必要です。いずれもまだ試験段階であり、実用化や大量生産の目途は立っていません。
ソニーもまだ想定販売価格を発表していないようですが、当面は最低400~500万円程度(もしくはもう少し高くなるかもしれません)の価格帯で販売してくるのではないかと思います。
ソニーのブランド力であれば、消費者もこの価格帯の高額商品でも買う可能性はあると思いますので、期待はできます。
逆に、消費者向けのブランド力がない企業がこの価格帯でEVを販売したとしても、売れないでしょう。
ソニーは自動車メーカーとアライアンスを組む必要がある
ソニーは今回、試作品の車体製造をオーストリアの「マグナ・シュタイヤー」というサプライヤーなどに委託しているようです。今後もサプライヤーへの製造委託という方式で製造していくかどうかは、まだ正式に決まっていない様子。
ソニーグループの川西泉執行役員も、会見では「他の自動車メーカーからいくつか連携の話はもらっている」という趣旨の話をしています。
実はEVの幻想の1つとして、内燃車からEVになれば「誰でも簡単に自動車を作れるようになる」というものがあります。
これについては、半分は正解ですが、半分は間違っています。
たしかに電池の供給先の目途が立てられれば、エンジンがなくなることで自動車製造のハードルが下がることは確かです。
しかしながら、どの会社でも継続的に売れる自動車を安定的に製造できるようになるかというと、その答えは「ノー」です。
自動車1台を製造するノウハウはかなり高度なものであり、サプライヤーを管理して安定的に部品の供給を確保するのも簡単ではありません。また製造ラインをゼロから構築するのは、膨大な時間とコストがかかります。
テスラでさえ、ゼロから工場を建設したのではなく、最初は三菱自動車が北米撤退した工場を引き継いだという経緯があります。これをゼロベースで構築するのは至難の業でしょう。
ソニーについても、年間数十万台レベルの販売者数を目指すのであれば、おそらく最も手っ取り早い方法は、既存の自動車メーカーとのアライアンスだと思います。