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未熟な若者が「FIRE」を目指す危うさと愚かさ。ドケチ生活で“種銭”を貯めても不幸になるだけ=午堂登紀雄

「FIRE」を目指す危うさ

以前にも「FIRE(Financial Independence, Retire Early = 経済的に自立し、早期リタイアする)」について書きましたが、そういう人たちの取材記事やコラムを読むと、やはりちょっと危うい印象を受けるので持論をご紹介します。

【関連】ドケチな青春、惨めな老後?「働きたくない」FIRE志望20~30代が早期リタイアで失う幸せの種とは=午堂登紀雄

FIRE論の多くは、例えば「1億円を貯めて会社を辞める」とか、「高配当株に投資してその配当で暮らす」みたいな方法です。

たとえば年利4%の配当でも、1億円を投資すれば年間400万円の収入になる(実際には20%が課税され、手取りは320万円)、月25万円あればまあまあ暮らせるよねと。

経済的自立は賛成しますが、早期リタイアは人生の縮小均衡になるリスクがあると私は考えています。

早期リタイアは「自分で稼ぐ力」を身に着けてから

リタイアするなら、自分のスキル、能力、経験に十分な蓄積をして、確固たる知的基盤ができたと自信を持てるようになってからの方が望ましいというのが私の考えです。

まず1つ目の理由は、その方が高収入を得て投資元本を増やしやすいからです。そもそも1億円貯めるには、相応の高収入である必要があります。

仮に毎月20万円を投資信託などに振り向けられたとしても年間240万円ですから、30年以上かかります。毎月30万円貯めてようやく28年目に達成です(利息や配当の再分配は無視して)。

そんなに投資できる余剰があるほど収入の高い人はそう多くないでしょう。20代ならなおさら給与水準は低いですから、もっと時間がかかります。

FIREを望んでいる人は「早く会社を辞めたい」「仕事をしたくない」という人たちでしょうから、そこまでパフォーマンスが高くない人が多いと考えられます(もちろん例外はいますが)。

一方、私の周りでセミリタイアしている人は、若いころは仕事に没頭し、それなりに成果を上げてきた人ばかり(不動産投資家やネットトレーダーは別格です)。

その資本的蓄積(人脈や能力、経験など)のおかげで、少ない時間でより多くのリターンを上げられている印象です。

ちなみに私のサラリーマン最後の年は年収1,200万円で妻が年収400万円、世帯で1,600万円ありました。手取りでは1,000万円ちょっとにはなりますが、普通に生活していても年間500万円くらいは貯蓄に回す余裕がある計算です。

当時、私は外資戦略系コンサルに勤務し、それ以前のコンビニ本部でもがむしゃらに働いていましたが、そこで培ったマーケティング力や論理的思考力が、その後の私のキャリアを支えていると感じています。

たとえば不動産投資でも起業でも、このような著述業でも、それまで積み上げてきたスキルが役立っている。これは自慢話でもなんでもなく、自分の能力に投資をしてきたからです。

能力資本を積み上げたおかげで、40代になって収穫期を迎えることができました。しかし、収穫するには種をまいて育てる必要があります。

これまでたくさんのプロジェクトに参加し、いろんな人と会い、あちこち旅行し、挫折や逆境、修羅場を経験し、叱られ怒られ、周囲に迷惑をかけ、乗り越えてきました。

その後、東日本大震災による原発事故を目の当たりにし、パソコン1台あればいつでもどこでも仕事ができるように仕事の形態をシフトし始めたのが40歳の頃です。おかげでコロナの影響もほとんどありません。

しかし、何も種をまいていない人、育てていない人には収穫期は訪れないように思います。

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