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3月からの「連続利上げ」に怯える投資家が見落としていること。重要なのは回数よりも“誘導技術”=脇田栄一

3月からの「連続利上げ懸念」もあって、やたら回数ばかりが注目される。しかし、FOMCはFFレートを機械的に決めることはできず、あくまで誘導するだけ。回数よりも「誘導技術」が重要である。

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プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

いまだに見かける「IOER(超過準備付利)」の記述

これはブログではお伝えしていなかったかもしれないが、2020年に米国では預金準備率を0%にしたことから、所要準備付利(IORR)と超過準備付利(IOER)の区分けが必然的に無くなり、現在は「IORB」なんですよね。

まぁその、とくに言及することではないのだけど、メジャーな株式サイトなんかでも未だにIOERと連呼している専門家がいるのが何度か目に付いたので是正というわけではないが、しっかりしてくれ、という意味で時間あったので書こうかと。

IORBは一時的なものなのか恒久的なものなのか、Fed自体は将来はわからない、としている。

以下、私のブログの過去記事から抜粋する。

時間軸の段階としては、①政策必要性の認知ラグ、②政策決定までの決定ラグ、③実際に実行されるまでの(実行)ラグ、④決定したのちの効果ラグが存在する。 金融政策の場合、決定は早いが効果は遅い。逆に、財政政策の場合は決定が遅く効果は早い。<中略>

前回、実行FFレートの目途は0.05%(であろう)としたが、図のように翌日物リバースレポレートが支え、IOERで抑え込んでいる形になっている。FFレートがこの水準を下回ってくるようだと、この2つの金利を一段上(5ベーシスポイント)にシフトさせることになるが、目先はここが注目点だといえる。(ここの議論でFEDとしないのはIOERの決定に関し、会合は不要だからである) 

※参考:FFレートを挟み込むコアコリドー調整について – ニューノーマルの理(2021年6月16日配信)

上記事は6月16日の記事なんだけど、そのときIOER(IORB)は0.10%で、翌日6月17日に0.15%に引き上げたでしょう?リバースレポレートも0%から0.05%に引き上げましたよね。つまり、抜粋箇所の通りにシフトした。

実行FFレートを安定化させるための措置だったんだけど、正式にIORBという呼称になったのは7月下旬なので、当然そのことは知っていたんだけど、まぁ(言葉は悪いが)適当にIOERと記載していたわけです。

利上げは回数より「誘導技術」が重要

なぜ今回このようなことを書いたかといえば、3月からは連続利上げ懸念があるわけでしょう?

この3階層の金利政策というのは非常に重要になってくるから、と一言で言ってみる。よく、「利上げは何度」というふうにお決まりのセリフしか出てこないけど、FFレートって機械的にFOMCで決めることはできないわけです。

あくまで誘導すること。

そして今は、その誘導自体が難しいので、1度利上げするにも、このようなテクニカルな措置が必要になってくるんですよね。

ちなみにIORBはIOER同様に理事会で決めることができるが、リバースレポ金利は会合が決定することになる。

まぁマニアといえばマニアな話。しかし至って常識的な話といえばそういうことなので、専門家を名乗る人は「何度利上げ」「今年は何度」なんて簡単に言う前に、技術的な話をした方がいいんじゃないですか?(ネット証券のコラムなんかで多々間違いを見かけるわけです)。

投資家のレベルは年々上がってきているので、利上げ1つにしてもそれを求めている投資家は多い。なんといってもドル円レートにも大きく関係してくるわけです。 また更新します。

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image by:MDart10 / Shutterstock.com

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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