fbpx

ロシア制裁で儲かるのは誰か?米国の「いじめ」とプーチンの危険な賭け=矢口新

経済制裁でロシア財政に大ダメージ

以下、CNNの記事を日本語に訳して紹介する。

最も効果的なロシアへの制裁。ドイツは火曜日に、ノルドストリーム2パイプラインの認定を停止した。これは、ウラジーミル・プーチン大統領が東部ウクライナの2つの地域の独立を認め、この分離した領域に軍隊を派遣する命令を下してから、ロシアにこれまでに課せられた経済的、財政的な罰則で最も強力な措置となる。

米国と欧州連合、及び他の西側の同盟諸国もまた限定的な経済制裁を発表した。西側諸国が彼ら自身の軍隊をウクライナに派遣する見込みは少なく、経済制裁がロシア政府を罰し、更なる攻勢を抑止するための最良の手段となっている。

ノルドストリーム2は年間550億立方メートルのガスを供給することができる。これはドイツの年間消費量の50%以上に相当し、パイプラインを管理するロシアの国営企業ガスプロムに150億ドルの利益をもたらすものだ。

SWIFTから排除された国の前例がある。イランの銀行が2012年に、同国の核開発プログラムに関して、欧州連合によって制裁を受け、接続を外された。

ロシアがSWIFTから排除されると、ロシアの経済は5%落ち込むと、2014年にアレクセイ・クドリン前財務相が試算した。前回、この制裁が検討されたのは、ロシアのクリミア併合に対応してのものだった

※参考:The sanctions that could really hurt Russia – CNN(2022年2月23日配信)

親ロシア派による、ロシアはいつか欧州のパートナーになれるという30年越しの期待は、ロシアのウクライナ侵攻で最初に犠牲になったものの1つだともされている。

フランスのフィヨン元首相は「欧州はNATOの拡大に対するロシアの拒絶感を理解しなかった。それが、危険な対立を招いた」と私見を声明で公表したことで、プーチン大統領をかばうような発言だとして批判を浴びたため、「紛争の責任は、すべてプーチン氏にある」と立場を修正、ロシアの化学企業など2社の取締役を辞任すると表明した。

イタリアのレンツィ元首相、フィンランドのアホ元首相、オーストリアのケルン元首相もロシア企業の取締役辞任を表明した。それぞれ首相退任後、物流や金融企業の取締役に就任し、プーチン政権と欧州政界の深い絆の象徴とみられていた。

ドイツではシュレーダー元首相がロシアの国営石油大手ロスネフチの取締役を務めており、今年の2月初めには、国営ガスプロムの取締役候補に指名された。ガスプロムは、ノルドストリーム2の運営会社である。
※参考:Some, but not all, former European leaders quit Russian boards. – The New York Times(2022年2月24日配信)

NATOに追い詰められていたロシアの現実

一方で、2016年にはルーマニアに米軍のミサイルがモスクワに向けて配備された。2018年にはポーランドにも計画され、2022年中には配備される予定だ。

下記の日経新聞の図解は、今回のロシアの侵攻を、それなりに歴史的な背景を含めて解説している。「かつての帝国復活をめざすロシア」とあるのは、単なる観測なので無視し、事実だけに注目して頂きたい。
※参考:ウクライナ なぜロシアは侵攻したのか – 日本経済新聞

上記の図解でよく分かるが、旧ソ連の構成国だったエストニア、ラトビア、リトアニアも加盟したことで、ポーランド駐在のNATO軍がロシア国境に達することを阻むのはベラルーシとウクライナだけとなった。

ベラルーシはここ何年間か、親ロ政権の腐敗が取り沙汰されているが、ウクライナでも武装クーデター以前には、親ロ政権の腐敗がさかんに取り沙汰されていた。そして、親米派の政権奪取後にはすぐに米欧が新政権を承認した。

プーチン大統領は、安全保障を巡る状況を変えるロシアの試みがすべて無に帰したとして、ウクライナに対する特別軍事作戦を命じる以外に選択肢はなかったと述べた。

また、ウクライナがNATOに加盟すれば、ルーマニアやポーランドで行ったように米軍の最新兵器がロシア国境に並べられるとの危機感も示した。

確かに、クリミア併合に関しては、私もプーチン大統領に選択肢はなかったと見ている。クリミアは1954年まではロシアの領土、今も6割がロシア人で、後の4割はウクライナ人とコサック人だというだけではない。ロシア黒海艦隊の基地があるからだ。

ロシアを仮想敵国とするNATOへの加盟を考えるウクライナ親米政権に、安全保障の要だともいえる海軍基地を残すという選択肢は考えられない。また、2014年のウクライナ革命は武装クーデターだったので、クリミア自治政府の武力制圧もまた正当化されるとしたのだ。

しかし、キエフまでの侵攻は、他に選択肢がなかったとは思えないでいる。

Next: 儲かるのは米国?ロシアのガス供給が止まればどうなるか

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー