オイルショックと同じ道をたどる?
ただ、確かに原油価格は上がっていますが、このまま上がり続けるかというと必ずしもそうではない側面もあります。
同じような状況になったのが1970年代のオイルショックの時です。
当時は中東戦争によってOPECが石油の供給をしないと言ったり原油価格の決定権を握って価格を引き上げようとしたりしたため、供給不安から原油価格が高騰しました。
しかし、その後の動きに注目すると、石油に頼りすぎてはいけないということで脱原油、産業構造の変化が起こりました。
さらに、原油を輸出すれば儲かるということで、非OPECの国々が原油を増産しました。
需要の減少と供給の増加によって、原油価格の下落をもたらしました。
つまり、原油価格が上がり続けるということはなく、もはや論点はどこでピークアウトするかというところになっています。
今回のケースもオイルショックの時と同じような経路をたどるのではないかと考えています。
実際にアラブ諸国は原油を増産すると言っていますし、アメリカのシェールガス開発も進んでくると思われます。
時系列でまとめてみます。
まず、ドイツ等が戦争を止めることを優先して対露制裁に参加するとなるとさらなる原油価格の上昇の要因となります。
逆に自国の経済を考えて参加しないとすると、これ以上は原油価格は上がりにくいのではないかと思います。
また、戦争が長期化すれば原油価格は高止まりするでしょうし、アラブ諸国やアメリカの原油増産もすぐに出来るわけではありませんから、なかなか下がらないと考えられます。
中期的には金融政策が大きく影響してきます。
FRBはコロナショックで金利をほぼゼロにしたところから、利上げをして正常化させようとしています。
インフレを抑えるためです。
ところが、この戦争によるインフレは必ずしも金融政策による物価の上昇ではなく、原油価格が上がったことによるコストプッシュインフレなので、金利を上げたとしてもインフレが収まらない可能性があります。
物価が上がり、消費が落ち込んでくると景気悪化につながりかねず、景気が悪化している時に金利を上げるとなるとより一層経済活動の意欲を削いでしまいさらに景気を悪化させてしまうこととなります。
金融政策をどのようにするかが非常に難しくなっており、これが目先の株価に大きく影響を与えるという認識を持っておいてください。
また、アメリカのシェール開発が進むかということもあります。
これほど原油価格が上がると、経済理論的には進む可能性が高いと言えますが、一方でグリーンエネルギーへの転換の観点から開発に二の足を踏む可能性もあり、実際にどう動くかが注目されるところです。
もっと長期的な見方をすると、「脱原油」というものもあると思います。
実際にモノを作ろうとすると、原油価格などのの変動の影響は避けられません。
コストを下げてビジネスや生活を行おうとすると、「デジタルシフト」が効果的です。
極端な話ですが、飛行機に乗って旅行に行くよりもVRで体験すればいい、というような流れになる可能性もあるわけです。
まとめますと、まずは政治的な駆け引きが原油価格に影響を与えてくるでしょう。
その後、景気が悪化しながらの物価上昇である「スタグフレーション」が起こる可能性が高いと私は考えています。
そして、様々な対策が取られる中で産業構造改革が起こるだろう、というのが、短期、中期、長期の流れではないかと思います。
この流れの中でどう動くべきかというと、物価上昇景気悪化の局面ではどの企業も苦しむことは確かです。
まずはここで生き残って、その後の長期トレンドに乗っていける、人々のニーズに合った商品を提供できる企業を買うことが、いつ何時においても言えることですが、長期投資では重要となります。