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いつまで節電で乗り切れるか。脱炭素・海外依存・災害の三重苦で日本は「停電大国」へ=澤田聖陽

他国への「エネルギー依存」はリスク大

脱CO2は、ヨーロッパが主導して始めたものであるが、そのEUはどうなっているかといえば、ドイツはロシアから天然ガスを大量に輸入し、フランスは原発に発電を依存しているというのが現状である。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻、その後のロシアへの西側諸国の経済制裁の実施により、ドイツは苦しい立場に立たされている。

端的に言えば、ドイツのエネルギー安全保障の欠陥が露呈したのである。

東西冷戦後約30年続いたグローバリズムの拡大は、2010年代後半から綻びが見え始めていたと思う。

しかしドイツは、当時の政権が盲目的にグローバリズムを信仰していたのか、ロシアへのエネルギー依存を強めるような政策を推進してしまった。

その結果、今回のウクライナ危機で窮地に立たされている。

「台湾有事」が起これば日本は窮地に

日本は、ロシアへのエネルギー依存度ではEU諸国ほど高くない。

しかし中東へのエネルギー依存度は高く、中東から原油やLNGなどを輸入するのに海上交通路(シーレーン)の要所である南シナ海を通らなければいけない。

今後、中国と台湾の有事が発生すれば、このシーレーンが使えなくなるような事態も想定される。

また再生可能エネルギーについては、例えば太陽光発電のパネル生産は中国への依存度が極めて高い(かつては日本製もあったが、価格競争によりほぼ無くなってしまった)。

また現在注目されている海上風力であるが、世界首位と2位はシーメンスガメサ(ドイツ)、ヴェスタス(デンマーク)だが、3位以下6位まではは中国メーカーが並ぶ。(2019年データによる)

このような地政学的なリスクを考えると、残念ながら現在の日本では原発を止めたままにしておくという選択肢は取り得ないと考える。

原発を止めたままにできない日本の再生エネルギーの現状

日本では原子力関連事案に対しては、どうしても冷静な議論ができないという土壌がある。

被爆国であり、3.11も経験したので無理からぬ面もあるが、結論はひとつしかないという姿勢は改めて、原発を動かさなかった場合どうなるのか、また動かす場合はどれぐらいの期間動かす必要があって、その後どのような次世代エネルギーに転換していくのか等を議論すべきである。

原発についても技術革新が起こっており、「小型モジュール炉(SMR)」の開発なども進んでいる。

SMRについては、小型であるため、炉心の冷却機能(外部電源)が喪失した場合でも、自然冷却が可能になると見込まれている(理論上は炉心溶解が起こらないと言われている)。

よって従来の原発に比べると安全性の面で優位性が高いと言われている。

もちろん本当に安全性が高いかどうかの検証は必要であるが、原子力=危険という目ではなく、一度フラットな目で検証する必要があるのではないかと思う。

日本メーカーでも、IHIと日揮が米国のSMR関連ベンチャーであるNuScale Power, LLCに出資し、SMRの事業化を検討している等の動きがある。

Next: 冷静な討論ができない日本の原子力アレルギー

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