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なぜ「円安なら株高」が崩れたのか。株価が上がらぬ2つの元凶と「円高」急旋回リスク=斎藤満

「ワニの口」でも円安が進まない

もう1つの疑問符は、米国の積極的な引き締めに対して、日銀の指値オペ明確化はいわば緩和の強化にあたり、FRBと日銀との間には「ワニの口」が大きく開いた形になっています。

それがはっきりした4月の日銀決定会合後に1ドル131円を付けましたが、そのあとは、FRBの積極引き締め策提示にもかかわらず円安は進んでいません。

市場関係者の間では1ドル125円の節目が破られたので次の節目は135円で、これを破れば140円、150円もあり、との声が聞かれます。「ワニの口」が開いていれば、その間はずっと円安が進むと言わんばかりです。

その掛け声のわりにドル円が重い動きとなっているのは何故でしょうか。

投機筋はすでに大きな円ショートを形成

1つは投機筋があらかじめこの「ワニの口」を織り込んで、通貨先物取引で円ショートを積み上げたことです。

シカゴIMMの通貨先物非商業取引をみると、日本の大型連休中には10万枚ものネット・ショートとなっていて、ここからの投機筋による追加売りの余地が次第に小さくなっていることがあります。

政府財務省の警戒感

もう1つは為替の所轄官庁である財務省の円安警戒感です。4月28日に1ドル131円台を付けたことを受けて、財務省高官は「足元の動きは極めて憂慮すべきもの」と発言しました。この「極めて憂慮すべきもの」との言い回しは、従来であれば為替介入をしてもおかしくない時の表現です。

政府と財務省は、黒田日銀総裁とは異なり、物価高につながる円安の行き過ぎには強い警戒感を持っています。為替に関しては最終的に財務省が管轄し、日銀はその子分として、財務省の指示で動く形になります。

その点、日銀の「円安は全体としてプラス」の認識よりも、政府、財務省の「極めて憂慮すべき」の認識が優位にあります。

この関係を認識する市場関係者は、日銀の指値オペなど、円安容認策にもかかわらず、政府、財務省が円安を止めにかかる可能性を意識しています。鈴木財務大臣とイエレン財務長官との間で為替介入の話をしたとの報道に対して、「そのような事実はない」と否定しましたが、介入のリスクはゼロではありません。

また今日の円安には「黒田円安」の感もあり、政府財務省が日銀に「政策協調」を求め、円安につながるような金融政策の修正を求めるか、総裁交代の圧力をかける可能性も排除できません。

市場には「黒田総裁辞任なら10円以上円高に」との認識もあります。日銀以外、政府財務省、財界ともに歓迎しない円安にベット(賭ける)することには相応のリスクがあります。

Next: PPP(購買力平価)でのドル円の乖離は急激な円高をもたらす

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