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米国の景気後退はいつ起こるか。FRB元幹部は「不可避」と発言、2023年に襲い来るスタグフレーションに要警戒=斎藤満

来春の景気後退確率は4%弱

米国市場にはイールドカーブの形状で景気後退を判断する見方が広がっています。

つまり、FRBの急速な利上げにより、イールドカーブが長短逆転の「逆イールド」になると、一定の時間的なラグをもって米国景気が後退に陥る、との見方です。

実際、ニューヨーク連銀はこのイールドカーブの形状をもとに「景気後退確率」を算定しています。具体的には10年国債利回りと3か月物のTB(Treasury Bills/割引短期国債)の金利差によるモデルを作成し、1年後の景気後退確率を計算しています。この確率は平時でだいたい10%前後で、これが20%を超えると黄色信号、30%を超えると8割の確率で近々景気後退に入ると見られます。

直近の数字は今年4月のもので、1年後、つまり23年4月に景気後退に入る確率は3.7%となっています。FRBは今年3月に政策金利を0.25%引き上げましたが、本来ならインフレが出現した21年中に利上げを開始すべきだったとの見方が多く、パウエル議長もこれを認めています。

当局の対応が後手に回ったことで長期金利が先行して大きく上昇しました。

結果として長短金利差が拡大しているため、イールドカーブ・モデルによる景気後退確率はむしろ低下したことになります。平均の10%をも大きく下回っているため、今後1年の間に米国景気が後退に陥るリスクはほぼゼロということになります。

年内にも長短金利逆転か

しかし、「4月まで」と「これから」では、金利環境が大きく変わります。

足元では3か月物TB金利が1%弱、10年国債利回りが2.9%前後ですが、ここから政策金利が急ピッチで上昇するため、3か月物TB金利も今後急上昇します。年内に3%を超える可能性があります。

FRBの中には、景気に中立な政策金利水準は2.4%から2.5%との認識があり、今回は中立水準以上に引き上げる必要性を指摘しています。

先に紹介したFRB元幹部のように、政策金利は中立水準より少なくとも1%以上高める必要があるとすれば、早い時期に3.5%まで引き上げられます。TB金利もこれに応じて上昇します。その時長期金利がどうなっているかが問題です。

当局の異例の積極利上げで市場が景気後退を予見すれば、10年国債利回りは3%を大きく上回ることはないかもしれません。

一方、インフレが長期化するとみれば長期金利はもう一段上昇し、4%を目指す可能性もあります。その場合は政策金利の引き上げ幅も大きくなり、長短金利ともに上昇することになります。

FRBは従来「予防的引き締め」を行い、インフレが顕在化しないで済むケースも多く、その場合は長短金利の逆転は回避されます。

しかし、今回はインフレ対応が明らかに後手に回り、すでにインフレは40年ぶりの高水準になっています。その分、引き締め度合いが強くなり。景気の犠牲も大きくなります。

インフレが長期化するかどうかにかかわらず、年内に長短金利が逆転する可能性が高いと見られます。

Next: 逆イールド発生から約1年のラグで「景気後退」入りか

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