「ターゲット」急落が相場全体の下げをもたらした理由
後出しだろうと批判を覚悟で書いていく。ターゲットたちが相場全体の下げをもたらした理由はマクロとミクロ両方の視点で見るとこうなる。
<昨日の大きい下げのポイントその1:経済全体のマクロ視点からの下げ理由>
経済は「需要」と「供給」で決まる。
今まで、需要は金融緩和で拡大した一方(ディマンドプルインフレ要因)で、供給に問題があって石油高やサプライチェーンの混乱、例えばコンテナの不足とか(コストプッシュインフレ要因)があり、受給双方で価格が上昇してきているとされた。
ところが4月で価格上昇は「ピークアウトしたんじゃないか?」「それでも小売売上はしっかりだよね」じゃあ株価はリバウンドしようか、っていうのが火曜日の上昇。
が。ターゲットの決算は「確かに価格上昇の恩恵もあって売上は確保したけど、アパレルとか家電の売上は急速に落ちてますよ(需要は落ちている)」「供給の制約とか燃料高(コストプッシュインフレ要因)で業績むっちゃ悪化」という内容。
要するに「全体としてのインフレがピークアウト感あるのは景気減速の前触れ」「にもかかわらず相変わらず『コストプッシュインフレ要因』は強烈で企業業績には大きなマイナス」という「最悪の組み合わせ」を示しているんじゃないかと解釈された。
<昨日の大きい下げのポイントその2:ミクロの視点、業種で見ていけば>
・売られたのは当然、まず「小売」。Amazon含む(リアルだけでなくネットストアも売り対象)
・アパレルがダメだったってので、「アパレル関連」
・次は携帯電話と車がダメなんじゃない?ということで、「アップルやEV」
・家電がダメなら半導体もダメだよね、というわけで「半導体」
・消費がダメなら、当然、広告もダメだろ。ってことで広告に依存する「ビッグテック」
・原油高直撃なら陸運みんな死ぬよねってことで「運輸系会社」
・アメリカ景気減速ならってことで商品市況軟調。連れて「資源」の会社
・リスクオフなら若いグロースは特に売りやすいよねってことで「フィンテック」
・リスクオフの国債買いで長期金利が“悪い低下”、「銀行株」売り
ということになる。
個別
小売大手ターゲットは2-4決算が前年同期比52%の大幅減益と予想外の収益悪化になった。売上高がコンセンサスを上回りながら減益になったのは、ひとえにサプライチェーンの混乱のせいと、燃料高による輸送コスト増大のせいだという。ターゲットは24.9%安、売買代金は6位と猛烈に売りが膨らんだ。ネックラインをぶち抜き、もちろん52週安値を大幅更新。なおYahoo!ファイナンス(アメリカ)やバロンズによれば、ターゲットの24%安は「ブラックマンデー」以来の下げ率になるそうな。
ターゲットによればアパレルや電化製品の消費支出が急速に減少したともしており、消費者が不要不急の消費を減らしたと話していることも株の売り要因。(アメリカ経済はそもそも個人消費が7割以上を占める(日本だと5割をやや超える程度)ため、この消費減衰情報はものすごく大きな意味を持つ)
ウォルマートも決算が悪かった後に出たターゲットの悪い決算のせいで「この決算は企業固有の理由じゃなくて環境がもたらす企業業績全体の後退懸念」として捉えられ、小売のアマゾンはもちろん、幅広い業種の株全体への売り圧力になってしまった。
なおウォルマートストアズも売買代金9位で6.8%の続急落。コストコが売買代金10位に入って12.4%の急落。ホームデポ5.2%安、ホームセンターのロウズ5.2%安、ディスカウントチェーンのダラーツリー14%安、ダラーゼネラル11%安とドラッグストアからホームセンターからディスカウントショップまで普段あまり名前を見ない銘柄まで売買を集めて急落。Amazonも7.1%安。
「アパレルの売上が急速に落ちた」という話からナイキが5.6%安、ルルレモン10.8%安。
燃料費高騰が大きいってんでフェデックス8%安、ユナイテッドパーセル6%安。ウーバーまで7.2%安とガソリン使う銘柄を集中的に売ってくる流れも目立つ。
テスラ、GAFAM、半導体ツートップが軒並み安。
4月の小売売上では好調だった自動車販売だが、ターゲットが言うように個人消費が落ちるなら当然、自動車販売が次の被害者ってことになる。
テスラ6.8%安、フォード5.5%安、GM5.9%安。
携帯電話不信懸念で、アップル5.6%安。
広告収入落ち込み懸念でテック株が下げてメタ5.1%安。動画配信も真っ先に切られそうってことでネットフリックス7%安。若いフィンテックではショッピファイ3.2%安、ビットコインの下げもあってコインベースは再び9%の急落。
シェブロン3.4%安、コカコーラ7%安、オキシデンシャル5.3%安。
銀行でバンカメ3%安、JPモルガン1.7%安。
AMD6%安、エヌビディア6.8%安。ソックス指数は結局5.17%の急反落になった。
(筆者注:このメルマガは新天地の考え方を書いたもので、特定の銘柄及び指数に関する商品の売買を推奨または指示するものではありません。銘柄の値動きについては想定と違う場合もあります。投資される場合は読者の方独自の責任で行われるようお願いします。)
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『新天地の株式投資日記』2022年5月19日号より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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