黒田日銀総裁は「物価上昇は一時的なもの」として、金融緩和の継続を表明しています。しかし、これは「言い訳」に過ぎません。現在の円安は50年続いた英国のポンド安に酷似しており「利上げしたくてもできない」というのが本音です。『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年6月8日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
金利を「上げられない」日銀の事情
日銀の黒田総裁が、5月になっても「2%を超える物価上昇は一時的」というスタンスを崩さないのは、市場から要請されている「利上げ」をしないための理由づけのためです。
日常用語では「言い訳」です。それに2023年には、1%の上昇率に下がるとしています。
本当でしょうか?
日銀は、長期金利を0.25%以上に上げないよう、金額は無制限の指し値オペ(10年債を、市場の実勢より高く指定して買うこと)をし、政府・日銀の目標だった2%を超えるインフレになっても、金融緩和を続けています(筆者注:普通は2%を超えるインフレなら、長期金利は1%程度でなければならない。0.25%の金利は異常に低いのです)。
日銀介入で起きた1ドル134円の円安
理論的にはインフレ率を追うはずの金利が、日銀の介入によって上がらない。このため、長期金利が3%台に上がった米国債との金利差(スプレッド)は、2.75%に拡大しました。
米国の金利との差で測るスプレッドが拡大したので、日本と海外から「円売り/ドル買い」が起こり、1ドル134円の円安になりました。
マイナス金利の円を借り、預金でも金利がつくドル、3%台の金利にがったドル10年債を買えば確実な利益が出ます(円キャリートレード)。円キャリートレードは円売りなるので、更に円安になっていくのです。円安は、ドル高です。
しかしこれはドルが強いのではない。円が弱い。
世界の主要通貨では、円が一番下がっています。
以降では、日本のインフレの中での低金利と、量的緩和(日銀による国債買い)がなぜ行われるのか、その理由を示します。