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いつまで日本は金融後進国なのか?パウエルと黒田発言で明白になった日米市場の差が縮まらぬワケ=高梨彰

6月23日にパウエルFRB議長の議会証言があり、インフレ率や、景気後退の可能性など、米国中央銀行に誤りがあったことを認めました。この発言により米国市場の先行きの不透明感は薄まりました。それに比べ、日本の黒田日銀総裁の最近の発言はどうでしょうか?市場に不安を与える弁解的発言に終始しているように思えます。(『徒然なる古今東西』高梨彰)

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プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

パウエルFRB議長がインフレ率上昇を「驚き」と表明

より明らかに優れていると常日頃思うことが一つあります。そして、6月23日のジェローム・パウエルFRB議長による、半年に一度の議会証言でも、その一端が示されています。

パウエル議長は景気や金融政策見通しについて、議会で証言しました。1978年に作られたハンフリー・ホーキンス法(Humphrey-Hawkins Full Employment Act:完全雇用と均衡成長法)の流れを汲むものです。今でも通称として、HH法といえば半期に一度のFRB議長議会証言を指します。

パウエル議長は証言の中で足元の経済環境や利上げを開始した背景などを述べています。結論は今後もインフレ率を目標とする2%に下げるため、大幅な利上げを行う用意があるというものです。

そして大幅利上げに踏み込まざるを得ない理由として、率直に「驚くべき」インフレ率の上昇を挙げています。「見当違いだった」とアッサリ認めた次第です。

加えて「更なる驚きも起こり得る」とも。ここには「予想はする。でも常に外れはある」といった感覚が伝わります。自らの誤りを認めようとしない頑なな姿勢とは明らかな違いがあります。

誤りを認めることで信頼性を上げる米中銀

世間の目に常に晒される中で金融政策を実践し、しかもその誤りを自ら認める。これは簡単なようで中々出来ることではありません。

どうしても、言い訳や回りくどい言い回し・修辞により自分のプライド死守を優先しがちです。「出来る人」と呼ばれる人ほど、この穴に嵌ります。

相場でいえば、損失隠しみたいなものです。損を認めるのは恥ずかしいのですが、隠せば往々にして更に損失は拡大します。

世界で最も注目されている中央銀行のFedが間違いばかりとなれば、その批判はとんでもなく大きくなるはず。それでも自ら「合っているところ、間違っているところ」を示す姿勢はFedへの信認、ひいては米国の国益にも寄与しているようにみえます。

Next: パウエル議長の発言で、先行きが見えた米国市場

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