機能不全の外国人技能実習生を保護制度
母国で日本への外国人技能実習生に応募するのは「出稼ぎ収入」を得たいからです。
それは母国での賃金水準が低いため、日本での賃金が、途方もなく高く、魅力的に映るからなのです。
たとえば2020年の日本人の平均年収は433万円(正規・非正規・男女含む)ですが、ベトナム人の平均年収は約40万円ですから、10倍もの差があります。
しかも、実習生に応募するのは、賃金水準の高いハノイやホーチミンなどの都市部からでなく、貧しい農村部の人が多いので、年収が20万円を切っているケースも少なくないのです。
一見すると、日本での1か月分の賃金が、ベトナムでの年収分に匹敵するとも見えるため、大いなる錯覚を覚えてしまいます。
ベトナムと日本の物価水準を考慮していないからです。
母国の送り出し業者は、実習生になりたい人を田舎から多数集め、日本から採用面接に来る監理団体(実習生受入れの取りまとめ団体)の役員や、中小・零細の雇用事業主を接待し(飲食や性接待が常態化)、雇ってもらえるように働きかけます。
採用が決まれば、送り出し業者からの1ヶ月程度の研修(日本語や生活習慣講習など)を受けてから日本へ送り出され、日本の監理団体でも1か月程度の研修(日本語学校などに丸投げする)を受講させ(合計で2カ月間程度の講習が必要)、日本の事業者の下での就業となるわけです。
そのため、実習生に採用された人は、こうした費用の補填分として、50万円から100万円位の借金をし(平均80万円の借金額)、地元の送り出し業者に支払うシステムになっています。
結局、最初から実習生を食い物にしている構図で、母国の送り出し業者や日本側の受入先の監理団体や事業者たちは、自分たちの負担すべきコストまで(渡航費や滞在費など)、実習生に払わせているカラクリなのです。
日本側の監理団体というのは、外国人技能実習生を雇いたい日本の中小・零細事業者からの要請を受けて、外国人技能実習生を束ねて斡旋し、技能実習生の管理や保護監督を行う事業協同組合のことをいいます(許可制)。
しかし、こうした日本側の監理団体にとって、中小・零細事業者は、年間の組合費や実習生受け入れ費用(一人あたり年間数十万円)を毎月支払ってくれる大事なお客さんです。
ゆえに監理団体は、月に一度の中小・零細事業者への訪問チェックでさえ、事業者が実習生に酷いことをしていても、見て見ぬふりをしがちなのです。言葉も通じないので、ほったらかしになりがちです。しょせん技能実習生の保護など眼中にないのです。
ゆえに、外国人技能実習生は誰からも保護されない、極めて無責任な制度下におかれているといえるのです。
監理団体は、非営利が原則ですが、役員の給与については、制限がありません。そのため、儲かっている監理団体では、役員メンバーの年収が軽く1千万円を超えているところまであるのです。
また、法令違反のない監理団体は「優良な監理団体」に認定されますが、そうなると技能実習期間を3年から最長5年に延ばせ、技能実習生の受け入れ人数枠も増やせる制度もあります。しかし、こうした「優良な監理団体」に認定された監理団体はわずかなのです。
アメリカ国務省は人身売買と批判
こんな奴隷制度のような日本の技能実習制度は、2010年時点で、劣悪な強制労働の温床になっているとして、アメリカの国務省からも「人身売買」と批判されています。
また、日本弁護士連合会も2011年に外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書を日本政府に提出しています。
外国人技能実習生になった開発途上国の人たちは、日本で苛酷な扱いを受けて、当初母国での「日本大好き! 憧れの国!」というイメージから「日本大嫌い! 最低の国!」と記憶することになるでしょう。
国際貢献を謳っておきながら、奴隷労働を強いるのですから、外国人技能実習制度は、日本の評判を国際的にも著しく貶める制度といってよいのです。
ただちに廃止すべき制度なのに、30年も続けてきたのが日本政府だったのです。
日本の国益を損なう制度なのに、国会議員たちはいったい何をしてきたのでしょうか。
技能実習生の「痛み」を感じずに、「見て見ぬふり」をさらに続ける気なのでしょうか。
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