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中国経済は「地獄の一丁目」住宅バブル崩壊が直撃。泡と消えた習近平“世界覇権”の夢=勝又壽良

中国の住宅販売不振は深刻な度合いを深めている。主要70都市の住宅価格は、この6月で10ヶ月連続の低下である。中国国家統計局発表のデータだ。ロックダウンの一時的な影響だけで片付けられない事態へ突入している。14億人が国内の不動産バブルで仮の繁栄を楽しんだに過ぎず、その「賭場」である不動産市場は、すでに幕を閉じたのである。中国で、住宅産業の不振が続けば経済成長はどういう影響を受けるか。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年7月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

成長が止まった中国経済

中国の4~6月期経済は、前年同期比で0.4%成長である。事前の予想では、マイナス成長も当然と見られていた。辛うじて、最悪事態を回避した。だが、先進国の採用している「前期比」ではマイナス2.6%。年率換算では、マイナス10.8%もの大幅な落ち込みである。

中国はなぜ、GDPの増減を前年同期比で発表するのか。前年同期比は、1年前と移動平均するので大きなフレがないという意味だけである。前期比で発表して、景気動向を敏感に示すべきである。それを避けているのは、景気変動が共産党統治へ与える影響を配慮しているからだろう。

今年上半期(1~6月)のGDPは、前年比で2.5%増に止まった。これを、政府目標の5.5%前後へ押し上げるのは事実上、不可能な事態となっている。習近平氏は、今秋の党大会で国家主席3選を目指している。まことに困った状況になった。できるだけ、目標に近いレベルまでGDPを押し上げるべく、無理なインフラ投資へ拍車をかけている。地方政府にさらなる債券を発行させて工事を強行する方針だ。

中国は、2008年のリーマンショックの際も同じ手法を使った。当時としては、大規模な「4兆元」のインフラ投資というカンフル注射で、世界経済の落込みを乗り切った。だが、この際の無理な投資が、地方政府の財政を狂わせて過剰債務を抱えるきっかけになった。その後2012年、習近平氏の「突撃命令」(インフラ・住宅の投資強行)で、地方財政は改善されないどころか悪化を続けている。もはや、限界を超えているのだ。

人口は23年に1位陥没

一言で言えば、中国経済はすでに疲弊へ向かっている。人口も今年から減少に向かう。23年には、人口世界一の看板はインドに奪われる。人口減は、中国社会が斜陽化に向かう第一歩である。すでに、生産年齢人口は2011年にピークを迎えた。中国は、人口減によって高齢者負担がぐっと重くなる社会になっているのだ。

これまでのような経済政策は今後、通用しなくなる。習氏に、その認識がゼロである。無理矢理なインフラ投資で経済を支えても、あとには過剰債務が残され、問題を大きくするだけである。習氏は、米国との対抗だけしか頭になく、傷を深くしていることに気付かないのだ。

人口動態から言っても、中国は絶対に米国に勝てない構造になっている。人口動態こそ、一国経済の潜在成長率を左右する重要要因である。日本が米国へ開戦したような無謀さを、中国もしようとしている。習氏は負け戦をせず、14億国民の老後を第一に考える段階に来ているのだ。

以上のような視点で、この4~6月期のGDP成長率の急速な落込みを分析すると、中国社会の直面している「人口高齢化」が、経済成長率の急悪化の主因であることが理解できるであろう。

Next: 90年代日本の二の舞に?中国経済の足を引っ張った2つの失策

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