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中国経済は「地獄の一丁目」住宅バブル崩壊が直撃。泡と消えた習近平“世界覇権”の夢=勝又壽良

中国経済の足を引っ張った2つの失策

1)ロックダウン(都市封鎖)が、経済活動を麻痺させた主因の1つである。この背景には、高齢者のコロナ罹患が、死者を増やすというリスクを抱えていた。中国では、高齢者のワクチン接種が遅れている。しかも、中国製ワクチンの効果が米欧製に比べて劣ることから、その被害を最大に受けるのが高齢者である。

中国は、儒教社会である。形の上でも、高齢者を敬う形を取らざるを得ない。コロナで高齢者の死者が増えることは、中国社会ではタブーである。こうした状況下において、医療体制の不備も手伝い、世界で唯一の「ゼロコロナ政策」を踏襲する事態へ追い込まれた。北京市トップは、「今後5年、ゼロコロナ政策はありうる」と発言し、物議を醸した。この発言は、直ぐに削除されたが、本音を物語っている。

2)住宅不況の長期化も、中国経済の足を引っ張っている。住宅価格下落(主要70都市)は昨年9月から始まっている。今年6月まで連続10ヶ月の下落だ。住宅購入世代は、若年層である。人口動態において、高齢者の比率が高まることは、若年層の減少を意味する。つまり、中国の住宅ブームは購入者層の減少によって終わったと気付くべきである。

不思議なことに、中国ではこういう認識がないのだ。その背景には、住宅を投資対象にしていることがある。利殖対象が金融資産でなく、住宅という実物資産を選択するのは、中国経済の後進性を物語っている。中国は、世界に門戸を広げた金融資産投資を認めれば、狂ったように住宅投資へ群がることもなかったはずだ。一方では、これによって貯蓄が海外へ流出するので、国内需要は低下する。だが、経済の安定化を考えれば、海外への個人投資を認めるべきだった。習氏の偏見が、これを禁じたのだ。

日本は、中国経済と反対の道を選んだ。早くから資本自由化へ踏み切ったので、個人の資金も出入り自由である。企業も積極的に海外投資している。これが、一旦緩急あれば、円安相場を利用して日本へ戻ってくるのだ。中国にはこういうバッファーもなく、14億人が国内の不動産バブルで仮の繁栄を楽しんだに過ぎず、その「賭場」である不動産市場は、すでに幕を閉じたのである。

90年代日本と同じ行動

中国経済は、人口動態面から見ても大きな曲がり角を回ったことは事実である。だが、習近平氏は、目先のGDP成長率に拘って、インフラ投資を強行している。この姿を見ると、日本のバブル崩壊後の行動と近似していることがわかる。

日本のバブル崩壊は、1990年である。政府が、この事態に対して本格的な認識に至ったのは10年後である。この間、政府は、需要不足をカバーするとしてインフラ投資を行ない、国債増発に走った。民間に積み上がった過剰債務の処理も遅れ、それは2000年代にはいってからである。

小泉内閣(2001~05年)は、バブル崩壊後の民間不良債権処理と、郵政省と道路公団の民営化に踏み切った。これによって、ようやく日本経済は「健康体」を取り戻した。だが、人口動態面から言えば、生産年齢人口比率の低下という事態の中で、低成長を余儀なくされている。

この日本が通って来た道は、明日の中国の歩む道である。

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