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1ドル140円突破で債券市場を揺るがした“1998年の悪夢”は蘇るのか=久保田博幸

ムーディーズが日本国債を格下げ

11月17日に、米国格付け会社ムーディーズが、日本国債の格下げを発表した。公的部門の債務膨張も、格下げの大きな理由とされていた。日本政府が発行、もしくは保証する円建て債券の格付け、及び日本国の外貨建て債務、及び預貯金に対するカントリーシーリングを、それぞれAaaからAa1、Aa1に引き下げた。

1998年の小渕恵三政権成立後、次々に経済政策が打ち出され、1998年11月16日に発表された緊急経済対策の財源として、12兆円を上回る国債が第三次補正予算にて手当てされることになった。「なんでもあり」の財政政策により、国債の発行量は増える一方となっていた。

ムーディーズが日本国債を格下げるのは、ある程度想定されていたことでもあり、このニュースではそれほど債券は下げなかった。問題はその後となる。

大蔵省の資金運用部

まず、ポイントは1998年の11月20日。20日付け日経新聞に「大蔵省(当時、現財務省)は、1998年度の第三次補正予算で新規発行する国債12兆5千億円のうち、10兆円以上を市中消化する方針」との小さな記事が出た。

当時、大蔵省の資金運用部(郵貯や簡保の資金などを運用)は、国債発行額全体のかなりの程度を引き受けていた。国債の保有残高のうち、3割程度を占めていた。このときは補正予算分とはいえ、引受比率が突然に大きく低下することになったことで、市場が動揺を見せ始めたのである。

11月26日の日経新聞に、地方交付税の比率を引き上げると、同時に地方交付税の配分がない東京都など「地方特例交付金」制度を創設するとの報道(これは資金運用部の資金による)があった。

また、1999年度当初予算案で、過去最高の20数兆円規模の新規国債発行を盛り込むとの報道も。運用部が国債引き受けを減らそうというのは、この地方の問題がかなり影響していると言われた。

それに加えて、1999年度の新規国債発行額も増加する。1999年の1月から長期国債は、月々1兆8千億円と、4千億増額される見通しも出された。

12月に入り債券相場は、依然として下落基調となる。10日の日経新聞一面トップは、5年国債や30年国債の発行に関する記事となっていた。増発懸念の高まりで、相場はさらに下落した。

14日にロイター通信社のニュースとして「来年度(1999年度)国債発行額は70兆円以上、うち市中消化は60兆円以上=大蔵省」との記事が流れた。

運用部の引き受けが減るのは何も第三次補正予算だけでなく、来年度の国債引き受けも急減。その分、市中消化額が増加することがはっきりしてきた。これはまさに一大事。市中消化とは、つまり民間金融機関中心に国債を買っていかなければならない額となる。

Next: 大蔵省運用部のコメントに続き、蔵相発言で“運用部ショック”が発生

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