fbpx

1ドル140円突破で債券市場を揺るがした“1998年の悪夢”は蘇るのか=久保田博幸

1日のニューヨーク外為市場で140円台に突入し、24年ぶりの安値となった。24年前の1998年、日本の債券も“運用部ショック”という記録的な安値に見舞われた。今回はその再来はあるのか?(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)

【関連】米金利上昇で予想される住宅ローン破綻者の続出。パウエル発言から始まる世界恐慌への道=吉田繁治

※『牛さん熊さんの本日の債券』は、毎営業日の朝と夕方に発行いたします。また、昼にコラムの配信も行います。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

1998年8月以来の140円台となったドル円

1日のニューヨーク外国為替市場で円相場は5日続落し、前日比、1円25銭円安・ドル高の1ドル140円15~25銭で取引を終えた。一時140円23銭と、1998年8月以来24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。
出典-NY円、続落 1ドル=140円15~25銭、一時24年ぶり安値-日本経済新聞(9月2日付け)

インフレファイターとして積極的な利上げを進める米国の中央銀行にあたるFRBに対し、日銀の黒田総裁は「持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はない」と語ったように、緩和姿勢を改める様子はない。

この状態が継続される限り、ドル円の上昇基調は止めることが難しくなる。当然、仕掛け的な動きも入っていよう。日銀の姿勢が改められない限りドル円の140円は通過点に過ぎない。

1997年から1998年にかけて起きたこと

1998年8月以来と聞いて、ベテランの債券市場関係者は「おやっ」と思ったのではなかろうか。1998年11月にいわゆる「資金運用部ショック」が起きたのである。当時の様子を再確認してみたい。

1997年1月、タイのバーツが暴落したのを受けたのを契機に、通貨不安がインドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、香港など、アジア新興地域を襲う(アジア通貨危機)。

アジア諸国の動揺は、南米諸国やロシアに波及し、ロシアは債務不履行に追い込まれた(ロシア危機)。この危機は、ドイツなど欧州各国、そしてアンカー役とみなされていた米国市場にも波及。米国内景気の減速・後退が懸念されて米国株が急落する一方で、質への逃避への連想から米国債利回りが急低下した。

長期金利が初の1%割れ

世界的な金融システム不安の台頭によって、日銀は1998年9月9日の金融政策決定会合において、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%に引き下げる金融緩和策を決めた。この3年ぶりの金融緩和を受けて、長期金利が初の1%割れとなり、さらに低下して0.7%を一時割り込んだ。

9月19日には「金融再生法」が修正された。その後、長銀そして日債銀がこれに基づき国有化された。金融システム不安はこれにより収束しつつあると思われた。

Next: ムーディーズによる日本国債の格下げ

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー