世界中どこでも、失業率が高まっていくと暴動が起きる。先進国でも後進国でも変わらない。人々は追い詰められれば「何とかしてくれ」と大暴れする。ところが、日本だけは暴動が起きない。日本人は救いのない絶望を受け入れ、暴動を起こすことなく淡々と暮らしている。貧困に落ちたくないという焦燥感は自殺を誘発する。しかし、最初から低賃金で貧困であったなら、それが生まれながらの日常なので焦燥感がない。それが自殺する要因にならなくなる。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
物価上昇はボディーブローのように全国民を追い込む
2019年には消費税が10%に引き上げられ、2020年にはコロナ禍のパンデミックで何度も何度も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されていき、2022年からグローバル経済が急激に悪化して今に至っている。
折しも世界は景気後退(リセッション)に突入するかしないかの瀬戸際にまで追い込まれてしまった。これはどういうことなのかというと、日本の貧困化はさらにまた一段と悪化するということなのである。
社会情勢は非常に悪化している中で、安倍晋三元首相が狙撃されて亡くなるという前代未聞の事件も起きて、自民党は急激に精彩を失っていこうとしているのだ。このような状況では的確な経済政策が取られる見込みもなく、今後も経済情勢が良くなるわけがない。
2020年10月からは、食品価格も一気に値上げに突入した。10月だけで6,500品目以上が値上げし、家計負担は年間で約7万円も増える。これによって、非正規雇用で低賃金に苦しんでいる人だけでなく、普通に働いている人ですらも物価上昇で苦しいことになっていく。
特に年金生活をしている高齢者は最もダメージを受ける。いまや生活保護受給者の半分以上は高齢者なのだが、消費税が上がり、物価が上がり、それなのに少子高齢化の結果として年金受給額が絞られると、破綻していく高齢者はより増えていく。
社会の弱者になりやすい若年層と女性もまた一緒に追い込まれているのだが、物価上昇はボディーブローのように全国民を追い込んでいく。
2023年、私たちはあちこちの国で暴動が発生するのを目にするだろう。世界中どこでも、失業率が高まっていくと暴動が起きる。先進国でも後進国でも変わらない。人々は追い詰められれば「何とかしてくれ」と大暴れする。
ところが、日本だけは暴動が起きない。日本人は救いのない絶望を受け入れ、暴動を起こすことなく淡々と暮らしている。
日本人は暴動を起こさない。その代わりに自殺する
日本人は怒りを感じていないわけではない。年々悪化していく就労環境に真綿で首を絞められるように困窮していき、不満を押し隠し、将来への不安と何もしない政治に対して強い怒りを持っているのだ。
それでも日本人は暴動を起こしたりしない。その代わりに日本人は自殺する。暴動とは外に向かう怒りの発散だが、自殺は内側に向かう怒りの発散である。
日本人は怒りを抱くと、外ではなく内へと向かう傾向があるとはよく言われる。デモや暴動で暴れることができるのは一部の政治的な意識の強い活動家であり、普通の人はそういうのに参加することもない。
普通の人は社会的に追い詰められてもデモや暴動で暴れるのではなく、自分を責める方向に向かっていく。
「就職できないのは自分が劣っているからだ」
「就職できないのは自分が望まれていないからだ」
「自分は役に立たず、経験も足らず、優秀ではない」
「リストラされたのは自分が至らないせいだ」
「給料が下げられたのは自分が至らないせいだ」
「自分が食べていけないのは自分に能力がないからだ」
日本人は心の中で自己批判する傾向が非常に強い。自分に起きた不幸を社会のせいにするというよりも、自分のせいにする。そして、それによって自分を追い込んでいく。
社会のせいだと思えば暴動に結びついていくのだが、自分のせいだと思えば自分を責める方向に向かっていく。社会も「個人の能力が至らないのに、社会のせい、他人のせいにするな」という自己責任論がまかり通っている。
しかし、真面目に働いている人が追い詰められるというのは、すべてが個人の資質の問題だけでなく、明らかに社会のあり方や景気悪化や収奪的な資本主義にも問題があることが多い。
今の社会情勢は特にそうだ。すべてが個人の責任ではないのだ。それにもかかわらず、日本人は個人で社会の矛盾や不景気の結果までを、それに対処できない自分が悪いと考えて追い込まれていく。真面目な人ほどそうだ。