苦境に立つウクライナ軍と今後の危機
このように、ウクライナ軍の損害の大きさには驚かされるが、さらにウクライナ軍には問題がある。
すでに日本のメディアでも報道されるようになってきたので周知だと思うが、アメリカを中心としたNATO諸国の武器の在庫が枯渇し、十分な兵器支援ができなくなりつつあるのだ。
また、米中間選挙でウクライナ支援に消極的な共和党が、上下両院で過半数の議席を占めると、今後の兵器支援は一層難しくなるだろう。
ウクライナは戦争の開始から7回ほどの動員を行い、開戦当初は20万人ほどの軍隊を40万人まで増強している。しかしそれにしても、そのうち約12万人が死傷して戦線を離脱している。今後、兵力が不足してくる可能性は十分にあるだろう。
このような状況で、果たしてウクライナ軍は戦い切れるのだろうか?これから冬の長期戦に突入する。状況は決して明るくないように思う。
プーチンの「核兵器使用」は杞憂に終わる?
いま日本の主要メディアでは、戦争に負けて追い詰められたプーチン大統領が、劣勢を挽回するために核を使う可能性もあると喧伝されている。それが今後起こり得る危機だという。
しかし、いまのところロシア軍は特に追い詰められているわけではないので、このようなシナリオはちょっと考えにくい。
むしろ、今後本当に危惧しなければならない危機は別にあるはずだ。それは、ロシア軍が反転攻勢し、ウクライナ軍が戦い切れなくなったときの危機だ。
ウクライナ軍が相当に劣勢になり、ロシア軍の優勢が確認されたのであれば、ロシアと早期に政治交渉を行い、できるだけ早期に停戦するのがよい。
しかし、そのような状況になったとしても、アメリカとNATO諸国がこれを認める可能性は低い。敗北を認めることは、断固拒否するだろう。
すると、次のステップとして考えられるのが、アメリカを中心としたNATO諸国のウクライナへの配備である。これは、第3次世界大戦に一歩近づく大変に危険なステップになる。