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「円安活用」政策が円安で頓挫する矛盾。最大のネックは外国人労働者の“日本離れ”=斎藤満

円安で外国人労働力が離反

その中で大きな誤算となっているのが、外国人労働力の減少です。

しばらく外国人の入国が制限されていましたが、日本に残った外国人労働力に待ち受けていたのが円安です。

多くが日本に出稼ぎ労働に来て、本国に仕送りをしています。その際、同じ円での給料もらっても、円の価値が急落しているため、本国への送金がそれだけ目減りしています。

このため、出稼ぎの場としては円安の日本から、通貨の安定したほかの国に移る人が増えています。水際規制が緩和され、日本が外国人の受け入れを拡大しようというときに、出稼ぎ目的の労働者には円安がネックになり、日本以外の国に変更する人が増えていると言います。

これまで外国人労働力に頼ってきた飲食店・観光地・介護施設・農業では、外国人労働力の確保がこれまで以上に難しくなっています。

このまま円安が続けば、外国人労働力は出稼ぎの場として日本以外の国を選ばざるを得なくなります。

円安を生かすために観光支援し、インバウンド需要に期待するにも、その円安が労働力確保の面で大きな制約になってきました。円安メリットを生かすにも、円安が制約になるという皮肉な状況となっています。

需給での賃上げは物価への悪循環も

この人手不足の中で観光業などを中心に需要が拡大している結果、一部で賃金引き上げの動きが出ています。

政府日銀からすれば好ましい動きかもしれませんが、この場合、日銀が期待する「賃金物価の好循環」とは異なる結果が生まれる可能性が強いと見られます。

カギとなるのが労働生産性です。

賃金上昇が労働生産性の上昇に裏付けられたものなら、賃上げが新たな物価上昇圧力にならず、実質賃金の上昇、全体の需要拡大、つぎの物価、賃上げへとつながります。

しかし、労働生産性の上昇がないまま労働需給のひっ迫から賃上げに出ると、そのコスト高を企業は価格転嫁しないと収益悪化要因となります。

つまり、人手不足でどうしても労働力が欲しく、賃上げに出た場合、既存の労働力も新規の労働力も生産性の裏付けがないまま賃上げになるので、それは直接労働コスト高となり、収益を圧迫します。

その分、価格転嫁すると全体の物価を押し上げます。労働力全体でみると物価上昇によってまた実質賃金が低下し、生活を圧迫します。

人手不足で労働者の発言力が強いときにはまた賃上げを求め、これが通ると企業はその分価格転嫁してまた物価が上がります。いつまでたっても実質賃金は増えず、「賃金物価の悪循環」が進みます。

Next: 成り行き任せの日本に未来はあるか?賃金物価の悪循環に陥る可能性大

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