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「円安活用」政策が円安で頓挫する矛盾。最大のネックは外国人労働者の“日本離れ”=斎藤満

政府の経済対策では、物価高対策のほか、円安を活用することも柱に掲げました。財界からも円安を生かすために、海外生産を国内に回帰する考えが出ています。円安を抑えられないなら、せめて円安を活用するしかない、と言います。しかし、その円安活用にも思いもよらぬ伏兵が立ちはだかりました。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)※この記事は音声でもお聞きいただけます。

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年11月9日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

「円安を抑えられないなら、せめて円安を活用するしかない」

10月28日に閣議決定した政府の経済対策では、物価高対策のほか、円安を活用することも柱に掲げました。

観光産業を支援して5兆円のインバウンド需要を復活させ、各種イベントで盛り上げたいと言います。また円安を利用して農業輸出を拡大し、さらに海外での生産を続ける企業に国内回帰を促し、投資支援も検討するようです。

財界からも円安を生かすために、海外生産を国内に回帰する考えが出るようになりました。円安を抑えられないなら、せめて円安を活用するしかない、と言います。

しかし、その円安活用にも思いもよらぬ伏兵が立ちはだかりました。

人手不足が最大のネック

最大のネックが人手不足です。

帝国データバンクの調査によると、半数の企業が人手不足を感じていると言い、なかでも宿泊業では6割の企業が人手不足といいます。そのなかで政府は10月から旅行支援、水際規制の緩和で観光地では需要が急増し、時間外労働が急増するなど、その対応に苦慮しています。

観光地でも飲食業でも、コロナ禍で長期間需要の低迷が続き、これに対応できるよう、各企業とも人員削減を進めてきました。家族経営など、ギリギリの労働力で経営維持を図っているところも少なくありません。

そこへ政府が外国人観光客の入国規制を緩和し、観光支援に乗り出し、都道府県では「Go To eat」の再開も検討しています。

もっとも、これまでも「Go To」でコロナの被害を受けた産業の支援に出ましたが、それも感染の再拡大などで短期間で終わり、労働力の確保も徒労に終わったケースもあります。今また全国でコロナの第8波が懸念されるようになり、北海道・東北など、関東以北での感染拡大が目立つようになっています。

政府の支援がいつまで続くのか、需要拡大がいつまで続くのか、これらが不透明なうちは、常用雇用の拡大はリスキーです。

一時的な需要拡大に対してはパートタイマーなど臨時雇用での穴埋めが必要となります。しかし、日本の失業率はこのところ2.5%から2.7%の低位にあり、中小企業や個人零細企業で人手が確保できず、人手不足が深刻です。

Next: 安い日本から外国人労働力が離反。円安を活用すると簡単に言うが…

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