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国債を時価会計すれば欧米銀行の多くはすでに債務超過。いつ世界同時金融危機は暴発するのか?=吉田繁治

住宅価格上昇(20%/年)と家賃の上昇(10%/年)

「コア物価」を構成する経済学的な家賃は、借家の賃貸料だけではなく、持ち家の世帯を借家換算した「帰属家賃」を含みます。

持ち家世帯も、ローンの支払いとして家賃相当の金額を負担し、現金の支出はなくても、住宅の経年劣化分である減価償却費も負担しているからです。

日本のGDP(541兆円:22年4月)にも、所得ではない持ち家の帰属家賃が、49兆円(GDP比9.1%)も含まれています。

(注)帰属家賃は、同じクラスの住宅の賃借料が上がると、同じように上がります。持ち家を借家にしたときの、想定家賃です。住宅価格が上がると、帰属家賃は、その後を追って上がります。
参考:国内総生産(支出側)及び各需要項目-内閣府

インフレの遅行指標である米国の時間賃金は、5%上がっています。コロナでレイオフされた人のなかに、外出と通勤を嫌う人が増え、労働参加率が減りました。離職者数も454万人(労働者の3%)と多いからです(22年3月)。

一方、企業では政府の財政支出(1.9兆ドル:275兆円)が、企業売上になって人手不足になり、求人数を増やしました。求人数1,155万人ですが、採用人数は674万人と必要数の42%も少ない(22年3月米国)。
参考:米求人件数と離職者数が過去最高、退職者は再び労働市場に戻る傾向-日本貿易振興機構(ジェトロ)

米国の労働市場では、物価上昇が始まったとき人手不足になって、賃金が5%上がったのです。米国では企業の4半期の売上が減ると、簡単にレイオフ(首:ファイア)するので、好況に転じたときは労働力不足になります。

欧州も米国に近い。それ以前は2%の上昇率でした。賃金の5%上昇は、サービス価格の上昇になっています。賃金上昇は、インフレの遅行指標なので、インフレは長引きます。

家賃の上昇率は人件費より激しい。1ベッドルーム(1BR)の家賃の全米中央値は1,486ドル(21.5万円)と高い。日本の2倍です。前年比では賃金の2倍の11.8%上がっています。

住宅が全米1高いNY市では、中程度以上の物件の家賃が3,930ドル(56万円)と破格に高い。年間672万円の家賃では、2,000万円の年収がないと生活ができない。家賃以外も、あらゆる物価が上がっています

眞子様とNYで暮らしている小室圭氏が弁護士試験に通って、年収は3倍の2,000万円に上がるとして、週刊誌では「うらやましい賃金」とされています。しかし、NY市の高い家賃と物価では、東京では1,000万円の年収クラス(およそ50歳の銀行マン)の生活です。

「ドル/円」が100円なら、NYの2,000万円(14万ドル)の年収は、2,000万円÷(145円÷100円)=1,380万円です。家賃も39万円。現在の東京並み+αでしょう。

2022年の米国の物価と年収を見るときは「ドル高/円安」の要素を勘案しなければならない。
(注)1ドルが100円どころか76円という時代もありました(2011年:東日本大震災のあと)。

NYでの14万ドルの年収も、1,064万円(現在の1/2)でしかなかった。

11年前、アベノミクス(量的緩和500兆円)がないときの民主党政権の時期です。海外旅行費は、現在の1/2以下でした。今は、逆に海外から日本に来ると、旅行費は1/2。

11年前は、米国と世界の物価は、日本よりはるかに安かった。

日本の15年前の物価は高く、スイス並みでした。

2,000万円の年収と56万円の家賃は、米国が豊かになったことの証(あかし)ではない。所得以上に家賃(=住宅価格)と物価の、基礎生活費が上がっているからです。

米国物価は日本の倍、ドルはいずれ下がる

世界の通貨に対するドル高は、世界1速い速度(6か月で+3ポイント)で、FRBが利上げをしたため生じています。ドル以外の通貨は下げました。昨年比-25%の円は、主要国で下げがもっとも大きい。FRBは、インフレの長期化である8%台のCPIに対し、慌てているように見えるのです。

米ドルは、ユーロと円に対し、金利が高くなったという理由で、世界から、30%くらいは過大評価されています。過大なものは、時間が経っていくと下方修正されます。時期はまだ見えませんが、ドルが下がるのは米国の金利が下がって行く時期なので、たぶん2023年末でしょう。

スイスフラン高のスイスの物価も、現在、世界1高い。ビッグマックが845円(日本は370円)、住宅を含み、総じて物価は日本の2倍。夫人が食品スーパーで買い物すれば、一回が1万円。2人での外食も安くて1万円。高級なら必需のワインを入れて3万円でしょう。日本は、主要国で物価がいちばん安い。

スイスでは2,000万円の年収でも1,000万円の生活です。NYと似ています。

円安や円高の為替変動は、経済全体では大きな影響を及ぼしても、個人にとっては、どんな意味があるのかとも思えるのが、インフレでの生活感です。

1980年代までの日本の物価は、住宅価格を含んで約2倍でした。90年代、2000年代と日米相対物価(日本の円物価/米国のドル物価)は下がっていき、2005年頃にほぼ等しくなったのです。

現在は、ドルの過大評価(=ゼロ金利の円の過小評価)のため、米国物価は、実感では2倍、経済学的には1.5倍は高い。住宅価格は2倍でしょう。

現在は、銀行とファンドの含み損ですが、それが露見し、米国金融危機(=ドル危機)になったあとはドル安/円高に戻るでしょう長期的に見れば、過大評価、過小評価は修正されます。

Next: 日銀が参考にした経済論は誤っていたことが判明

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