物価変動の複雑な要因
インフレの問題は、簡単なものではない。
数理経済学的には「複雑系の難問」です。
1)全商品の加重を加味した販売価格の前年比の計算方法、
2)商品とサービス価格を変える要因が多数、
3)要因間の共鳴の影響、
4)海外物価の影響、
5)通貨レートの影響、
6)人間心理での期待物価
以上の内容が複雑な糸のように絡まっています。
日本の物価変動の要因を確定できなかった日銀は、方法とした量的緩和500兆円(国債を買うマネー増発)では、2%の物価目標を達成できませんでした。
日銀が参考にした誤った経済論
マネタリストの元祖フリードマン(1912-2006)は、「一般物価」の変動は、貨幣の量の増減から来るとしていました。「物価は貨幣現象」と管轄にまとめたその学説は、2000年代の日本では誤りでした。日銀は、一般物価について誤った学説を使ったのです。
ミルトン・フリードマンは、一般物価について以下のように言っています。
「石油価格が上がると石油関連商品への支出が増える、しかし、他の商品への支出は減る(所得は一定だから)。需要が減った商品の価格は下がる。このため個別の財の価格が上がっても、物価の全体(一般物価)は上がらない」
これは、本当でしょうか。考えてみてください。
当方は、需要が減った商品の価格は、多少は下がっても、価格が上がった商品分は下がらないと考えています。
(注)あらゆる学説では、その根拠になる大前提(証明のない仮説)が面白い。「…とすれば、***」とするのが学説です。
経済学で使われる「一般物価」は、約800品種の個別物価を、消費量で加重平均した物価です。全部の商品を、消費量で加重平均して、一般物価としてまとめています。(以上は、知識源的な記述)
日銀の失策により金融商品に流れた増発マネー
日銀が失敗したのは、日銀当座預金として増発されたマネーの多くの部分が、株と金融商品と海外の債券買い(円売り/ドル買い)に向かったからです。これが株価を上げて2012年の1ドル80円台から、120円台の円安にしました(2015年)。
10年間のドル/円:2020年以降の、140円を超えた円安/ドル高がかつてない「異常な速度」であることが分かります。
【中略】
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