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国債を時価会計すれば欧米銀行の多くはすでに債務超過。いつ世界同時金融危機は暴発するのか?=吉田繁治

インフレ退治のために世界各国が金利を上げていますが、今回のインフレは簡単には収まらないでしょう。金利が上がると国債価格は低下しますが、簿価では時価で計算されていません。時価会計で世界の銀行のB/Sを計算したら既に多くの銀行は債務超過に陥っています。世界金融恐慌はもうすでに始まっているのです。
(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年10月30日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

国債価格の下落で銀行破綻危機

1)インフレで金利が上がると、債券の価格は下がる。債券の売買は、株の30倍以上ある(日本では110兆円/日:株は3兆円/日)。株価は注目されるが、金融機関の間の債券の売買は一般には知られていない。
・金融機関の資産である債券の価格が、およそ15%下がると、自己資本がなくなり金融危機になる。債券とは国債(最も多い)、社債、住宅証券などである。

2)しかし国債は時価評価されない。22年10月で16.7%下がった米国債(30兆ドル:4350兆円:海外が7兆ドルを保有)は、今はまだ金融機関の簿外債務になっている(含み損は推計4.35兆ドル:726兆円)。

・金利が更に上がり債券価格が下がり続けると、6ヶ月後くらいから次第に露見し、自己資本を失った銀行へのレポ金融(債券担保の短期借り入れ)が停止されていく。
・リーマン危機で起こった金融危機と同じである。クレディスイスの損失も金利が上がったドル・ユーロ国債価格の下落から起こった。英国でも、類似の症状の年金危機が起こった(22年9月)。

市場は、ハード・ランディングはないとしているが、現在の含み損はそれに近づいているだろう。メディアの報道は、これを捉えていない。

3)現在、世界の債券市場は、FRBの利上げ(6か月で+3%)により、価格の下がった債券の氷山が流れ込み、凍っている。

・下がった国債の売買が、極めて薄い状態である。
・下がった国債を売れば、損失が確定するので売れない。
・これがマネーの流動性の低下であり、国際的な取引が最も多いドルの不足を生んでいる。

4)銀行間の短期借り入れであるレポ金融で借りるドルが、砂浜のように、干上がってきた。

・この状態も、まだ世界には、知られていない。
・銀行とファンドだけが知っていて、トレーダーは画面の価格の眺めて黙しているだろう。
・売れば巨大な損失が確定し、売ることができない。
・押すことも引くこともできないのが、現在の債券市場である。

2022年の世界的なインフレで、FRBは6ヶ月で3ポイントという、通常の引き締めの2倍は速い利上げをし、世界の株価と国債価格が下がっています。8月の米国CPI(総合)は、前年比8.3%です。

コア物価の上昇が高く危機ラインに突入

ウクライナ戦争から、価格が高騰したエネルギーと食品を除く「コア物価」の上昇も6.3%と高い(米国)。

全品目の総合CPIは、エネルギー価格の下落(原油120ドル→90ドル:10月)から下がる傾向ですが、金融政策を決めるコア物価は、逆に、7月の5.9%から8月は前年比6.3%と上がる傾向です。毎月0.6%平均で上がっています。

コア物価の57%くらいを占めるサービス価格は、米国の国内要因(賃金と家賃の上昇)で上昇します。

Next: 賃金上昇を上回る、米国家賃の上昇

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