JR東日本が安全対策の一環として、巡回する駅員の胸元にウェアラブルカメラを装着させると発表し、大きな反響を呼んでいる。
報道によれば、カメラの装着はトラブル発生時の状況把握と駅員の安全対策が狙いとのこと。映像を警備会社とリアルタイムで共有し、乗客同士のトラブルなどがあった際に、警備員らが速やかに出動できるようにするという。
今年度中に15か所程度の駅で導入する予定で、この26日から準備が整った駅で順次始めるとのこと。なお、導入する駅に関しては「安全上の理由」で非公表ととしているという。
駅係員らへの暴力行為は年間400件以上
上記の報道では、乗客同士のトラブル対策といったケースが挙げられている、今回の巡回駅員によるウェアラブルカメラ装着。
ただSNS上の反応などを見ても、この取り組みの大きな狙いのひとつに、利用客による駅員への暴力や迷惑行為といった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策があることは、もはや言うまでもないといったところだろう。
企業にとっては大昔から悩みの種だったカスハラ対策だが、ここに来て具体的な対策を取るところも増えているという話も。例えば任天堂では、製品の修理サービス・保証規定に「カスタマーハラスメント」の項目を新たに追加。カスハラに認定されるような行為があった顧客に対しては、製品の交換や修理を断る可能性があると明記したとのことだ。
くわえて百貨店やホテル業界といった、顧客と直に接する機会をシーンを抱える企業においても、カスハラに関するのガイドラインを新たに策定し、悪質な要求の定義や対応手順を明記したうえで従業員に周知させるといった対策を取っているところが多いという。
そんななか利用客との接触ということでいえば、駅の職員らもその機会が頻繁にあるわけで、なかにはトラブルになることも多いものと多いと推測されるところだが、それが暴力沙汰にまで発展してしまうことが多々あるのが、他業界と比べてもかなり特殊なところ。
実際、国土交通省が先日19日に発表した調査結果によれば、今年3月末までの1年間で、駅係員や乗務員などが顔を殴られたり言葉の圧力などといったカスハラを受けた件数は、全国で435件にものぼったという。
もちろんこの数字は、よっぽど酷かった事案にのみに限られるものとみられ、駅員がカスハラだと申告することなく、胸の内に仕舞ったといったケースも相当数あると想像される。このように駅員への暴力・迷惑行為が絶えない状況も、今回の小型カメラ装着という取り組みが始まった一つの要因であることは、間違いなく言えそうである。
迷惑千万な“撮り鉄”取り締まりにも期待する声
いっぽうで、今回の駅員による小型カメラ装着で取り締まりが進む、あるいは取り締まりの強化を大いに期待するといった声があがっているのが、いわゆる“撮り鉄”と呼ばれる人々の存在だ。
迷惑撮り鉄対策
JR東、巡回の駅員にカメラ装着へ#Yahooニュースhttps://t.co/JZRPCaVfYX— 空中ぱすた (@Flying_Noodle) December 22, 2022
駅社員へのウェアラブルカメラの導入について
害悪狩りに繋がるか? https://t.co/YR1cNjD5IG— あらかわ@新幹線year2022 (@ara_chem) December 23, 2022
良い事ですね。
酔っ払いから頭のチューニングがおかしい人や撮り○に対して、
ちょっとした抑止力と裁判沙汰になった時の絶大な証拠になるでしょう
(ただカメラを捥がれて暴れるバカが出てくる可能性もhttps://t.co/nvPoloelOr— ジャリコ横綱 (@wolvy20) December 23, 2022
鉄道写真の愛好家のことを指す撮り鉄だが、そのなかには公共ルールやマナーを守らない者が多く存在。そういった連中が駅のホームなどに殺到することで、ホーム上の安全確保や列車運行の妨げとなっている、あるいは咎める駅員や他の乗客らに対して、罵声を浴びせたりといった迷惑行為を働いていることが、ネット上をはじめとして以前からしきりに指摘されているのはご存知の通り。
さらに最近では、その迷惑ぶりがエスカレートしている感もあり、今年11月には「試運転の車両を撮りたかった」と、営業終了後の阪急電鉄の駅に進入した20代の撮り鉄男が、建造物侵入の疑いで捕まるなど、逮捕に至るケースもままあるといった状況なのだ。
そんな撮り鉄たちの傍若無人な振る舞いは、もはやネット上だけでなくテレビなどのメディアでも取り上げられることもしばしば。ただ、そこで彼らが自省して、マナーなどが向上すればまだ救いがあるのだが、決してそうはならないのが撮り鉄界隈の闇の深さ。
それどころかつい先日には、立入禁止エリアで鉄道写真を撮っていた人物を通報した高校生に対して、他の撮り鉄らがSNS上で悪口雑言の“集団リンチ”を行い、高校生に対して強制謝罪とアカウントの消去を強制するという、良識ある人間なら誰もが呆れ果てるようなトラブルも発生していたようなのだ。
【悲報】高校2年生の撮り鉄さん、立入禁止エリアで撮影を行っていた他の撮り鉄を通報して界隈から袋叩きに遭う
強制的に謝罪させられ、ついでに垢消しも強要される@B2010tetsuota pic.twitter.com/QTnSfXIX6K— 滝沢ガレソ (@takigare3) December 22, 2022
図らずしも、撮り鉄界隈では自浄作用が働いてないし、今後も働かないであろう事が証明されてしまったな
— napodekyu (@napodekyu) December 22, 2022
このように自浄作用が全く働かないといった撮り鉄界隈に対して、世間からは毅然とした態度で取り締まるべきといった声が、日に日に高まっているところ。それだけに、今回のウェアラブルカメラ導入を契機に、そういった無法行為を働く連中らの摘発が進めば……と望む意見が増えているというのだ。
一部からは「乗客のプライバシーは?」といった批判的な意見もあがっている、今回の駅職員へのウェアラブルカメラ装着の取り組み。だがそれ以上に、暴力・迷惑行為を働く利用客から駅員の身を守るため、さらに迷惑この上ない撮り鉄連中の一掃に繋がればということで、その導入効果を大いに期待する声はかなり多いといった状況だ。
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