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オセアニア通貨の転換点【フィスコ・コラム】

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豪ドル・NZドル相場の底堅さが顕著になりつつあります。オーストラリアとニュージーランドのインフレの勢いに違いがみられ、両国の金融政策に反映される見通しです。NZ首相の突然の退陣による影響は限定的ながら、NZドル売りの支援材料となりそうです。


1月25日に発表された豪10−12月期消費者物価指数(CPI)は前年比+7.8%と予想の+7.5%(前回+7.3%)を上回り、前月から伸びが加速。一方、NZ10−12月期CPIは+7.2%と、想定の+7.1%(前回+7.2%)とほぼ一致、インフレ峠越えの兆しを示しました。統計を受け、豪準備銀行の追加利上げとNZ準備銀行の引き締め鈍化の思惑から、豪ドル・NZドルは1豪ドル=1.09NZドル付近に一時強含んでいます。


豪ドル・NZドルが2022年の年初から上昇基調に振れたのは、NZ準備銀が利上げを先行したものの、7カ月遅れで引き締めに踏み切った豪準備銀の方が金利の引き上げ余地があるとみられたためです。しかし、豪準備銀が昨年9月に利上げペース鈍化についての見解を示すと、豪ドル・NZドルは1.1490NZドルをピークに失速。同年12月には1.0470NZドル付近に下落し、その年の上昇分を削りました。


昨年の終盤時点でインフレ指標はニュージーランドの方がオーストラリアよりも強く、NZ準備銀の一段の引き締めが期待され、豪ドル売り・NZドル買いが鮮明になりました。ところが、その後12月半ばから今年1月半ばまでは豪ドル買い・NZドル売りに反転。ニュージーランドの国内総生産(GDP)の成長率に陰りが見え始め、オーストラリアよりも不透明感が深まったためです。


政治情勢が両国経済の現状を裏付けています。アーダーンNZ首相は今月19日、今年10月に予定される議会選には出馬せず、来月上旬までに退陣する意向を表明。同氏は世界で初めて産休を取得した現役の首相として、メディアには好意的に取り上げられていました。しかし、直近の世論調査では物価の高騰が有権者の批判を強めたほか、コロナ対策で国論が二分される事態を招き、同氏の支持率は30%を割り込んでいました。


対照的にアルバニージー豪首相の支持率は55−60%を維持。同氏は特別に選任された先住民で構成された諮問機関の設置を公約としており、国民投票が進んでいないことへの批判はあるものの、現時点で政権運営は安定していると言えそうです。とはいえ、交易関係の深い中国の経済がまだ低調で不安視されています。NZ経済に続いて豪経済の減速懸念が強まれば、足元の豪ドル買い・NZドル売りは再び逆方向に振れる可能性があるでしょう。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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