2023年4月21日に、楽天グループの子会社である楽天銀行が上場することが決定しました。投資家のみなさんの元には証券会社から楽天銀行の株の紹介があるかと思われます。果たしてこの株、買ってよいものでしょうか。今回は、楽天銀行上場の持つ意味や問題点を解説しますので、ぜひみなさんの投資判断にお役立てください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
楽天銀行上場の概要
まずは簡単に上場の概要です。
- 楽天グループ100%子会社・楽天銀行が4月21日に上場
- 想定時価総額は約3,000億円(東証プライム)
- 楽天グループは約1/3売却で約1,000億円の現金化
- 仮条件1,630~1,960円
- ブックビルディング期間は4月5日~11日
端的に言うと、楽天グループがお金を得るために株を売るということになります。
楽天銀行には売るほどの価値がある?
楽天銀行には、売ったらお金になるほどの価値があるのでしょうか。
<業績推移>
楽天銀行の業績は好調と言えます。
預金額は、直近ではさらに増えて8.8兆円というところまで伸びていて、かなり積み上がってきています。
一方で純利益に関しては、伸びてはいるものの預金の伸びほどではないというところです。
とはいえ銀行のビジネスとはいかに預金を集めてそれを運用するかなので、預金が増えているということはポジティブに捉えて間違いないです。
<楽天経済圏>
楽天銀行は、いわゆる“楽天経済圏”において預金を獲得してきました。
楽天銀行に口座を持っていると、楽天で買い物をしたときにより多くのポイントをもらえますし、その他楽天のサービスと連携することでもポイントが貯まります。
預金口座数は1,300万以上、預金量は8.8兆円と、ネット銀行の中では最大となっています。
<運用>
獲得した預金をどのように運用しているのでしょうか。
同じネット銀行である住信SBIネット銀行は、住宅ローンが7割となっておりますが、楽天銀行は住宅ローンとカードローンを合わせても4割ほどとなっています。
一般的な銀行の運用は国債などの債券で行われることが多いですが、楽天銀行では”その他”に含まれるほど債権の割合は小さくなっています。
代わりに割合が大きくなっているのは『買入金銭債権』というものです。
親会社である楽天カード・楽天モバイルから、リボ払いされる権利やスマートフォンの分割払い分や通信料の権利を買い取っています。
また、「預け金」も多くなっていて、これはつまり運用先が定まらず預金を”持て余している”状態であるということが読み取れます。