fbpx

サイバネット Research Memo(1):2023年12月期より業績は再成長軌道へ

マネーボイス 必読の記事



■要約

サイバネットシステム<4312>は、製造業を中心に設計・研究開発などで利用されるCAE(コンピュータによる工学支援)ソフトウェアのソリューションサービス大手であり、クラウドセキュリティ製品なども取り扱っている。CAE製品で世界シェア約38%のトップ企業であるAnsysの製品を中心に、35社以上の製品を網羅的に取り扱っており、CAEソリューションのパイオニアとして約2,400の企業、350の大学・研究機関を顧客に抱える。また、欧米にソフトウェア開発会社3社を子会社に持つほか、中国、台湾を中心にアジア市場でもCAEソリューションビジネスを展開している。単体売上高の6割弱がストックビジネス(既存顧客のライセンス更新契約)で占められるため、収益の安定性も高い。

1. 2022年12月期の業績概要
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比12.2%減の19,936百万円、営業利益で同37.9%減の1,757百万円となった。2021年10月に米Synopsysとの販売代理店契約を終了したことが減収減益要因だが、既存事業に関しては主力のマルチフィジックス解析ツール※やエンジニアリングサービス、セキュリティ製品の販売が好調で増収となった。地域別売上高では、販売代理店契約解消の影響を受けて日本が同12.4%減、アジアが同30.8%減と減少した。アジアについては中国におけるロックダウンの影響も減収要因となった。一方、円安効果もあって北米が同22.5%増、欧州が同7.6%増とそれぞれ増収が続いた。なお、販売代理店契約解消の影響が限定的だった第4四半期(2022年10月〜12月)の業績については、売上高で前年同期比7.4%増、営業利益で同342.1%増と増収増益に転じている。

※研究開発の場において、複数の物理現象を組み合わせて解析することで、現象をより正確に捉えるためのツール。現実世界では複数の物理現象(構造、地場、電流、流体、伝熱等)が同時に作用しており、これらを切り離して解析すると開発対象物の挙動を正確に予測できない可能性がある。

2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比10.4%増の22,000百万円、営業利益で同5.2%増の1,850百万円と増収増益となる見通し。企業収益悪化による投資マインドの低下が懸念されるものの、同社のビジネス領域となる研究開発分野や情報セキュリティ分野については、投資の優先順位が高く予算を削られるリスクが低いこと、また、継続収入となるライセンス更新料が単体売上高の6割弱を占めていること、同社のAI及びAR/VRソリューションを導入する企業や研究機関が増加傾向にあることなどから、増収増益は可能と弊社では見ている。足元の受注状況についても堅調に推移しているようで、順調な滑り出しを見せている。なお、利益率が低下するのは、採用・教育費も含めた人件費の増加に加えて、下期に新基幹業務システムの導入に伴う減価償却費増を見込んでいるためだ。

3. 中期経営計画
同社は、2022年12月期から2026年12月期まで5ヶ年の中期経営計画をスタートしている。成長戦略として自社開発製品の強化、アジア事業の拡大、モノづくりのDX促進、SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用等に取り組み、トップラインの成長を図るとともに、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら高水準の利益率を目指す。経営数値目標としては2026年12月期に売上高で30,000百万円(2022年12月期比50.5%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費)で3,800百万円(同23.7%増)を掲げている。目標達成の鍵を握るのは自社開発製品・サービスで、2022年12月期で30%の売上構成比を40%まで引き上げる計画である。このため、同領域において国内外問わずM&A戦略を積極的に推進する考えだ。2022年12月末で金融資産(現金及び預金+有価証券+短期貸付金)は153億円と潤沢で資金面での不安はない。

4. 株主還元策
株主還元策については、短期的に減益になったとしても安定した配当を実施することを目的に、「親会社株主に帰属する当期純利益」の範囲を原則として、DOE(純資産配当率)で6.0%の水準を配当の目安としている。2023年12月期の1株当たり配当金は前期比横ばいの29.0円を予定している。また、自己株式の取得についても手元資金や株価水準等を総合的に勘案しながら、機動的に判断する方針である。

■Key Points
・CAEのリーディングカンパニーとして37年以上にわたり日本のモノづくりを支援
・2022年12月期業績はSynopsysとの販売代理店契約解消の影響で減収減益となるも第4四半期は増収増益に転じる
・2023年12月期は成長投資を行いつつ、増収増益を見込む
・M&Aも活用しながら自社開発製品・サービス、アジア事業を拡大し、2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー