薄利多売戦略ではない?利益率低下のワケ
まず、売上高の増加の要因は店舗数の増加にあります。
ここからさらに100店舗くらい増やすと言っています。
どのような店舗が増えているかというと、“スーパーマーケット隣接店”と呼ばれるものです。
無印良品というと、都会のショッピングビルに入っているイメージが強いですが、今はどちらかというと田舎への展開を進めています。
新店の7割がスーパーマーケット隣接店ということです。
元々都心を中心に展開していて、それが一時期は人気を呼び、ある種のブランドになりました。
大きな転換を行っているのがこのスーパーマーケット隣接店です。
スーパーマーケット隣接店は悪くない状況で、むしろ都会の店舗が足を引っ張っています。
<無印良品の問題点>
2014年頃に、無印良品が人気を博し、“ハイブランド”のような扱いとなりました。
そんな中、それまで小物中心だったものがアパレルに進出しました。
端的に言えばアパレルは原価率が低くて粗利が高いです。
中国でもハイブランドとして受け入れられ、業績も右肩上がりとなり、株価も大きく伸びました。
しかし、無印良品本来の“ブランドが無い”というコンセプトが逆説的にブランド化してしまい、値段が上がって中途半端な位置づけとなってしまいました。
その結果、“ブランドに胡坐をかく”ような状態となってしまいました。
アパレルにおいても様々なジャンルの商品を販売し、幅を広げるほどユニクロと競合する結果になりました。
人気がある状態で、アパレルも売れたので、さらにいろいろな商品を出していった結果、売れなかった商品が店舗の在庫としてどんどん膨らんでいきました。
在庫というものは目に見えない損失なので、どこかでは処分しなければなりません。
それが将来的な利益の圧迫につながりました。
新たな商品を出せば売れるという時期があり、そうしているうちに消費者の需要から乖離してしまいました。
<なんとかしなくては…>
「在庫」という爆弾が膨らんでいる状況をなんとかしようと、2021年に“第二創業”と呼ばれる中期経営計画を掲げました。
この時に現在の堂前社長が就任しました。
堂前社長はマッキンゼー出身で、ファーストリテイリングを経て良品計画の社長に就任しました。
コンサル出身で、この問題を解決するために就任したということです。
経営を立て直すために様々な取り組みを始めました。
- 在庫処分 不良在庫の一掃
売れなかった商品を損失にならないギリギリまで値下げして在庫処分を行っているのがこの1年の動きです。
- 商品の見直し 「これがいい」ではなく「これでいい」
今のブランド化している状態では無印の本来の、日常で使えるものをパッケージを簡素化することによって安価で販売しようというコンセプトと離れてしまっています。
普通の商品で“感じの良い”ものを比較的安価で提供するという原点に回帰しようとしているところです。
- 仕入れ体制の見直し 生産の上流から考える
これは経営としては当然のことですが、これまではきちんと行えていなかった部分です。
- 物流・広告・店舗運営の高度化 各分野プロフェッショナルを招聘
正直、無印は店舗運営が上手いとは言えない状況でした。
そこで、各分野のプロを集め、運営の高度化を図りました。
人材を集めようとしてもなかなか集まらないことが多いですが、無印の“人を惹きつける力”が発揮され、様々な良い人材を集めることができているようです。
- 日常生活を支える スーパー隣接店
人々の生活に入り込んで、誰にでも必要なものを安定的に売る企業として、ボリュームを上げながらコストを削減しているのが今の無印良品の戦略です。
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