fbpx

なぜ韓国は日本に急接近?中国依存の限界を悟ったユン政権が日本経済に抱く3つの下心=勝又壽良

韓国ユン政権は、発足1年で冷え切った日韓関係の正常化にこぎ着けた。韓国経済界が、日本との関係修復に期待を掛けるのは、次の3項目である。半導体、水素経済、観光客だ。ユン政権は、日本経済の再起を最も早くから予想していたのかも知れない。ただし、韓国が日本への経済連携を望むとしても、「歴史問題」が再び登場すれば連携効果は実を結ばないであろう。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

【関連】アップル「脱中国」は達成間近。消えた中国の世界的輸出増、サプライヤーの9割がインド・ベトナム移転へ=勝又壽良

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

日本に急接近する韓国ユン政権

韓国ユン政権は、発足1年で冷え切った日韓関係の正常化にこぎ着けた。

韓国は、保守政権ゆえに日本政府との話し合いが軌道に乗ったものだろう。左派政権であれば、相変わらずの「日本罵倒」が続いていたに違いない。現在の左派と日本では、考え方が180度も食い違っている。話し合いができる雰囲気でないのだ。

ユン政権は、経済を理解できる内閣だ。文政権では、経済知識がほとんどゼロの「空想的社会主義」に酔っていた。それが、政権交代に伴い一転して、韓国経済の将来が極めて不透明であることに気づかされたのだ。

その不透明要因を挙げると、次のようになろう。

1)人口高齢化が日本より早いこと
2)米中対立激化で対中輸出が不透明なこと
3)中国経済の長期停滞が明らかになってきたこと
4)韓国半導体素材の4割が日本依存であること

前記の要因を並べれば、韓国経済が緊急事態にあることを告げている。

韓国左派が、日本に対して謝罪せよとか賠償金を払えと言っていられる状況でないのだ。ユン政権は韓国にとって、過去を持ち出すよりも未来に焦点を合わせ、日本と協力することが死活的重要性を持つことに気づいたのだ。

この裏には、ユン氏が検察出身で証拠という「合理性追求」を職業としてきたことも大いに預かっている。文・前大統領は、社会派弁護士出身ゆえに証拠より感情に訴えてきた面がある。感情論で反日論を展開したのだ。

人民元安がウォン安要因へ

韓国経済が、中国経済と「双子関係」にあることは、外国為替相場の相似性にも表れている。最近、人民元相場は安値展開であるが、ウォン安を招いているのだ。韓国経済は、中国経済の動きに左右されるのである。

人民元安は、習政権が経済振興よりも安全保障重視へと大きく舵を切っている結果だ。不動産バブル崩壊と3年間のゼロコロナ政策の後遺症が、年初来の景気回復の足取りを重くしている。それが、4月以降さらに顕著になった。普通の政権であれば、景気刺激策を取るはずだが、習氏はあべこべなことを始めている。

「反スパイ法」強化(実施は7月1日)で、スパイ取締り機関の国家安全省が、コンサルなどの外資系企業へ立ち入り調査を行い、関係書類を持ち出すし圧力を掛けているのだ。これは、外資系企業への「嫌がらせ」であり、間接的に海外企業の中国進出へ拒否姿勢を見せているに等しいのだ。

地方政府は、必死になって外資系企業に対中進出を呼びかけているが、先の「嫌がらせ」行為が逆効果になっている。これでは、中国経済が成長軌道に復帰する可能性を押し潰すことになる。人民元売りが、激しくなるは当然であろう。

人民元相場は5月19日に、1米ドル=7人民元を割り込んでいる。これが、ウォン安に繋がっているのだ。ウォンは、人民元の「代理通貨」とも言われている。人民元取引に代わって、ウォンを売買するという市場慣行があるほど。ウォンは、これほどまでに中国経済の影響を受けるという一例がここにあるのだ。

中国人民銀行(中央銀行)は5月19日夜、為替レートの大幅な変動を断固として抑制すると表明した。発表文で、人民銀と外為規制当局が必要な場合は、投機を抑制するというのだ。中国人民銀行が、こういう声明を発表するほどの緊急事態になっている証明であろう。

市場は明らかに、中国経済の「変調」に気づいているから人民元売りに出ている。この理由は、4月の経済指標からも読み取れる。個人消費と設備投資が不振であった。

小売売上高は、前年同月比では18.4%増になった。3月の10.6%増より拡大した。これは、前年同月が上海のロックダウンで混乱した反映である。前月比(季節調整済み)では0.5%増で2カ月連続して伸び率が縮小した。実態は、このように鈍化しているのだ。

1~4月の固定資産投資は、前年同期比で4.7%増であり、1~3月の5.1%増より縮小した。インフラ投資の恩恵を受けやすい国有企業は9.4%増だが、民間企業の投資は0.4%増にとどまったのである。

民間の経済活動である小売売上高と固定資産投資が、ともに「微増」という事態が何を意味するかだ。先行きの経済に対する期待が急速に低下すると、企業の設備投資と個人消費も急激に鈍化し、一気に厳しい不況に陥るのだ。こういうケースに留意すべきである。

ここで、中長期的に経済成長率が低下する場合、将来に対する経済成長率の期待値が「急低下」する事実を忘れてはならないのだ。日本経済が、バブル崩壊(1990年)後に迎えた屈折点は、1993年からである。この間に、現実認識をするまでに3年も要した。この伝で言えば、中国の3年間のゼロコロナは、中国企業と国民に「バブル崩壊」という認識を頭に強く認識させたであろう。ゼロコロナが、奇しくも冷却期間になったのだ。

Next: なぜ韓国は日本に歩み寄る?期待されている3つのこと

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー