要因その1:米国の半導体戦略
まず、半導体の製造が日本に集中することです。
広島サミット前からにわかに米国の半導体企業のトップが日本に集まりました。これには米国の対中国戦略も深くかかわってきます。米国は半導体のサプライチェーンを再構築したいことと、中国の半導体生産を封じ込める戦略を考えています。
その点、中国は台湾を併合することで、台湾の半導体大手、TSMCを手に入れ、これをてこに、半導体の生産を拡大し、経済強国、経済大国化を進め、米国に代わって世界の覇権を握りたい考えです。
つまり、中国による台湾併合でTSMCが中国共産党政権の支配下になれば、米国や西側の生産は大打撃となります。
そこで台湾のTSMCに、米国アリゾナ州に工場を2つ建設させ、日本の熊本、欧州にも工場を建設させ、台湾工場が使えなくなった場合に備えています。
それでも供給が不足する事態を考え、中国と対峙する際の最前線基地となる日本に、半導体供給体制を強化させようということで、米国の半導体企業トップを集結させました。
今後、日本で半導体の生産が増えることになると見られます。
そして西側が半導体の供給体制を整えれば、中国が台湾に侵攻した際、中国がTSMCを利用できないよう、この半導体メーカーを爆破ないし機能停止に追い込むことを考えています。
TSMCのトップはさすがにショックを受けたようで、アリゾナ工場竣工時に、台湾工場を失うことは、国民も台湾軍も望んでいないと、苦しい胸の内を吐露しています。
いずれにしても、台湾の半導体生産機能を米国や日本に移し、さらに日本での半導体供給体制を強化する方向にあり、これが海外投資家に日本投資を促す1つの要因になっています。
要因その2:新燃料の承認、供給促進へ
もう1つが、日本の自動車産業に突然追い風が吹き始めたことです。
従来のガソリン燃料に代わって、すでに排出されたCO2と水素を結合した新燃料を承認し、これを利用するエンジン車も使えることになります。EV化では大きく出遅れた日本ですが、ここで起死回生を図るにはトヨタが進めてきた水素エンジンの活用しかないわけで、これを米国が認めたことになります。
そして政府は今回の「骨太」のなかに、15年で15兆円を投下し、水素の供給体制を強化推進する方針を示しました。これまで米国産業を脅かす可能性のある日本の技術はことごとく米国に邪魔され、実現しなかったのですが、この水素燃料車には米国も乗りました。
その背景には、やはり中国・サウジとの関係があります。
米国がEV化を進めた理由の1つが自動車業界で日本とドイツが優位に立ち、米国の自動車産業が苦戦していることで、ガソリンエンジン車で強みを持つ日本とドイツを苦境に追いやることでした。実際、両国はEV化で苦戦しているのですが、その恩恵を中国のBYDなどが享受し、中国を資する結果となってしまいました。これは想定外でした。
またサウジアラビアと米国の関係が悪化しています。特に中国が介在してサウジとイランが国交正常化に動き、これらがロシアと近い関係にあります。米国も世界最大の産油国になり中東原油に依存しなくなったこともあり、化石燃料の需要削減でサウジに打撃を与える戦略を取り始めました。米国は原油価格を下げてサウジの財政を苦しくすることも考えています。
これが水素による新燃料車の承認につながったわけで、日本車、特にトヨタには大きな追い風になり、水素燃料の生産にかかわるメーカーが物色されました。これも日本株買いの誘因になっています。