単年度主義対個別予算型
政府は国家権力を利用して財政を政治家の財布のように使いまくっていますが、これを許す要因の1つになっているのが、予算の単年度主義です。
米国の個別案件ごとに歳入を基にした歳出をセットで提示するのではなく、歳出を別に議論し、その財源は年度の税収、国債発行などで「どんぶり勘定」になるので、個別案件の歳出に対して財源問題が制約になりません。
今回の異次元少子化対策も、歳出だけでなく、その大規模な児童手当をだれがどう負担するのか、同時に議論させれば、このようないい加減な歳出計画にはならなかったと思われます。
日本も米国のように個別案件ごとに歳入歳出を同時決定する形にしてはどうかと思います。
法的縛りのない日本
また、欧米では政治家による財政資金の乱用を避けるために、法的な縛りを設けていますが、日本は野放図となっています。
EUでは毎年の財政赤字をGDP(国内総生産)の3割以内と決め、政府債務残高についてもGDPの6割までと決めています。コロナ禍や金融危機に際しては猶予を認めますが、平時に戻ればこれが適用されます。
一方米国では連邦政府債務の上限が決められていて、これが歳出の大きな制約になっています。コロナやウクライナ戦争などで歳出が膨らみ、国債の利払いもできない状況になれば、さすがに官邸は議会に債務上限引き上げを求めますが、議会も無条件ではこれを飲まず、今回も今年来年の歳出を強く制限する条件のもとで上限が引き上げられました。
日本にも何らかの法的な縛りが必要です。
金利による市場の警告を排除
さらに財政規律を緩めてしまったのが日銀によるゼロ金利政策、YCCです。
通常、政府が財政赤字を拡大し、国債の増発懸念が出れば、債券市場では国債の需給悪化を読んで長期金利が上昇します。まして今の様なインフレが重なれば、長期金利は3%程度になっていてもおかしくありません。それが政府に暗黙の圧力となります。
ところが、日銀が国債の過半を買い上げ、国債需給が実態を反映しなくなり、債券市場からの財政悪化に対する「警告」が発せられなくなりました。
長期金利は一時マイナスとなり、YCCの弾力化を決めた後でも依然として1%を大きく下回っています。インフレ率が3%を超えているだけに、実質金利は2%を超える大幅マイナスとなっています。
このため、政府内や政府に近いエコノミストからは、金利コストが低いうちに国債を大量発行してでも歳出を拡大し、成長を高めるべきとの議論が飛び出します。