バフェットがこの四半期、7月から9月期に8,000億円相当の株を売却しているとの報道がありました。これにより、現金同等物の残高は過去最高に達しています。一部では、バフェットが市場の暴落を予測しているとの噂も広がっています。一方で、バフェットが株を売却する意味について、本人から語られることはあまりありません。最近発売された『バフェット解剖』(著:前田昌孝/刊:宝島社)という本では、バフェットの投資における数字を分析していますが、これを見るとバフェットの意外な姿が見て取れます。バフェットの投資行動の本当の意味を考えることで、自らの投資に役立てるのではないでしょうか。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
バフェットが暴落を予期している?
日経の記事によると、バフェット氏の投資会社、バークシャー・ハサウェイ社が7月から9月にかけて株式7,800億円を売却し、手元資金が過去最高水準に達したとあります。
※参考:バフェット氏のバークシャー、GM株投資から撤退-HP保有減らす – Bloomberg(2023年11月16日配信)
バフェットの投資手法は、暴落時に優良な企業の株を安く仕込み、それを持ち続けることで大きな成果を得るものと知られています。
しかし、今回の株式の売却と手元資金の増加は、彼が将来の暴落に備えているのではないかと見られています。
現金ポジションは過去最高に達し、その中には米国債も含まれています。
アメリカの金利は今利回りが5%にもなっていて、明らかにお得ということでバフェットは米国債を積極的に買い込んでいます。
バフェットが株を売って現金や国債に替えていることから、リスクを避け、チャンスに備えているのではないか、これから暴落が来るのではないかと考えている人も多いのではないかと思います。
しかし、実際の数字で分析してみると、バフェットのバークシャー社が株を売却することが、必ずしも暴落を予期しているものではないように見えます。
少なくとも、過去に売り越しを行った後に暴落が確実に起きたわけではないということが『バフェット解剖』の本には書かれています。
これはバークシャー・ハサウェイの米国株ポートフォリオが四半期ごとに資金の流出入のデータです。
0より上が買い越し、下が売り越しを示していて、バフェットは実は回数的にはかなり多く売り越していることが分かります。
今、4四半期連続売り越しとなっていますが、これは決して珍しいことではないと言えます。
また、バフェットは暴落の前に売り越して現金を確保してきたというわけでもなく、例えば2008年のリーマンショックの前にはかなり買い越しています。
その後売り越しが多くなり、大きく買い越したのは2011年になってからで、その時アメリカは上昇相場に入りつつある時でした。
コロナショックの前は確かに売り越しが増えていますが、2020年3月のコロナショック時には売り越しでした。
コロナショックの恩恵はあまり受けられていないということです。
これらのデータを見ると、バフェットは相場を読む力に長けているわけではないということが分かります。
本人も「相場を読むのは仕事ではない」と言っていて、バフェットの行動から相場を予測しようとすることは無意味であると言えます。
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