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日本もM&A戦国時代へ。ベネフィット・ワン買収へ第一生命とエムスリーが火花…今後は同意なきTOBが増加する?=澤田聖陽

福利厚生代行大手のベネフィット・ワンに対して、エムスリーと第一生命ホールディングスの2社が株式公開買付(TOB)を実施すると表明している。今後の展開に注目が集まるが、日本のM&Aが変わりつつあることを示す象徴的な買収劇になりそうだ。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2023年12月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。

ベネフィット・ワンの争奪戦へ

10月7日、第一生命ホールディングス(第一生命)は福利厚生代行大手のベネフィット・ワン(ベネワン)に対して株式公開買付(TOB)を実施すると発表した。

ベネワンにはすでに医療情報サイト運営のエムスリーがTOBを実施しており、ベネワンも賛同表明していて、ベネワン株を51.16%を保有する親会社のパソナもTOBへの応募契約を締結している。

しかしながら、パソナの応募契約はエムスリー以上の価格でTOBが行われた場合、エムスリーと協議できるとされている。

上場会社であるパソナは、より良い条件での提案があったのにエムスリーのTOBにそのまま応募すると株主からの訴訟などのリスクが発生するため、第一生命の提案についても検討せざるを得ないのだ。

エムスリーと第一生命の「TOB条件」比較

エムスリーと第一生命のそれぞれのTOB条件を比較してみると、以下のとおりとなっている。

<エムスリーのTOB条件>

公開買付価格:1,600円
公開買付期間:2023年11月15日~12月13日(20営業日)
買付予定数の下限:51.16%
買付予定数の上限:55.0%

エムスリーのTOB条件は、TOB後もベネワンの上場維持を前提としており、現在51.16%のシェアを持っている親会社であるパソナから親会社の地位をスイッチするような内容だ(TOBによる買い付けは比例配分されるので、パソナ以外の株主が55%を超えて応募してこれば、パソナの持ち株51.16%が必ず売れるかは分からないが)。

<第一生命のTOB条件>

公開買付価格:1,800円
公開買付期間:2024年1月中旬を目途に開始予定(20営業日を予定)
買付予定数の下限:15.51%
買付予定数の上限:設定せず

第一生命のTOB条件は、TOBによって100%子会社化して上場廃止することも視野に入れている内容である。

パソナの持ち株についてはTOBで購入するのではなく、TOB終了後にベネワンが実施する自己株式取得に応じて売却させる前提である。

このスキームだと、みなし配当の益金不算入規定の適用という決まりがあり、パソナに税務上の益金が発生しないので、そのパソナの税務メリットをTOB価格である1,800円に上乗せすることを想定しているとある。

単純に今時点でのTOB条件を比較すると、第一生命のTOB条件の方が株主にとってメリットがあるように思える(後出し提案なので当然と言えば当然なのだが)。

今後はエムスリーがTOB価格を上げてくるかどうかが焦点となる(編注:エムスリーは12日、ベネフィット・ワンへのTOB期間を2024年1月17日まで延長すると発表しています)。

Next: 変わってきた日本のM&A。今後は同意なきTOBが増える?

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