fbpx

ついに最悪期に入った中国経済。2027年まで「首相記者会見ナシ」で押し通すしかない悲惨な内情=勝又壽良

「5%成長」は無謀

中国政府の掲げた24年の「5%前後」成長率には、多くの疑問が出されている。不動産投資の破綻から人口減少まで、これほど多くの逆風に見舞われているにもかかわらず、中国はどうやって5%成長を実現するのか、という疑問だ。「本当は実現できない可能性が高い。実際の成長率は恐らくこれより低く、もしかすると大幅に低いだろう」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月7日付)と見透かされている。

IMFは、先の通り25年の実質成長率を2.3%まで低下すると予測している。不動産対策を中途半端に行い、消費者の不安心理を放置しておけば、2%台への成長率低下は起こりうる事態だ。新築住宅需要が、「今後10年で35~55%減る」という客観的なデータは、中国経済の今後に重くのし掛る不安材料である。

中国の国政助言機関である全国政治協商会議(政協)委員で、同会議経済委員会副主任を務める尹艶林氏は3月6日、中国の不動産企業について「軽々につぶすことはできない」と述べた。経済や社会の混乱につながりかねないハードランディング(硬着陸)は避けるべきだとの認識を示したものだ。この言葉こそ、中国経済が不動産業によって左右されている実態をストレートに言い表している。

尹氏は、中国の不動産業について「直接、間接を含めGDPに対する貢献度は3分の1近くに達し、セメントや家電、家具など膨大な関連産業で構成される」と指摘した。そのうえで「不動産を代替できるような新しい産業が生まれる前に、重要な企業を軽々につぶせない」と述べた。『日本経済新聞 電子版』(3月7日付)が報じた。

中国当局は、不動産業を「潰せない」と言っているが、未竣工3,000万戸の個人救済策を取ろうともしていないのだ。このように、具体的な対策を取らずにどうやって不動産業を立直らせるのか。再建への青写真はまったく存在しないのだ。当局は、火災現場で消火作業もしないで騒いでいる、大衆と同じ見物人の立場である。消化作業に乗り出すべきなのだ。

得意技「GDP改ざん」

中国政府には奥の手がある。GDP統計の「改ざん」である。悪いデータが出れば、良好なデータに変える手法を持っているのだ。

23年の実質GDPは5.2%増であるが、名目GDPは4.6%増であった。実質GDP成長率が、名目GDP成長率を上回る点で「名実逆転」現象と呼ばれている。これは、需要不足経済に起こるパターンである。日本経済も長いこと、この辛酸をなめさせられてきた。それだけに、中国の23年経済の実態が手に取るように分かるのだ。

24年中国経済は、需要不足が自然に満たされる状況にない。2月の消費者物価は、春節(正月)祝いで豚肉需要などが増えた結果、前年同月比0.7%増になった。昨年8月以来6カ月ぶりのプラスである。だが、一過性の色彩が濃厚だ。2月の生産者物価は、同2.7%下落した。17カ月連続のマイナスである。マイナス幅は1月の2.5%から拡大した。

こうした物価状況からみて、今年もGDPの「名実逆転」現象が起こる公算が強い。最大の産業である住宅部門が、需要回復できる可能性が少ないからだ。となれば、中国得意の「GDP統計改ざん」が行われるであろう。具体的には、デフレーター(輸出入物価・消費者物価・生産者物価)の調整が、行われる可能性がある。外部からは、その計算過程が分らないから、自在に操作可能とされている。

こうして、見かけ上で24年に「5%前後」の実質GDP成長率を計上できても、中国経済の空洞化は確実に進む。失業率の高止まりや零細企業の倒産増が、中国経済の基盤を腐食させることだ。

Next: 止まらぬ出生率の低下……女性の44%が非婚化へ

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー