fbpx

葬祭業「ティア」遺体を取り違えて出棺。各地の葬祭場で相次ぐ同様の凡ミス…業界の深刻な人手不足と高齢化進行による葬儀数増加も遠因か

葬祭業「ティア」が埼玉県越谷市で運営する葬儀場「ティア越谷」において、男女2人の遺体を取り違えて出棺するミスを犯していたことが分かり、大きな反響を呼んでいるようだ。

報道によれば、本来は男性のひつぎを先に市営火葬場に運ぶ予定だったが、従業員が女性のものと取り違え。女性の遺体は、男性の遺族が立ち会う中で火葬されたが、その後遺灰の中に見覚えのない遺品があったことから、取り違えが判明したとのこと。

業者側が、ひつぎや遺体の手首に目印としてつけた名札などの確認を怠ったために、間違いが起こったとのことで、同社は取材に対し「非常に重く受け止めている。原因を究明し、再発防止を徹底したい」とコメントしているという。

同社のFCでは“香典泥棒”職員も発生

名古屋市に本社を構える株式会社ティアは1997年に設立。典礼会館を展開する「日本セレモニー」や、公益社が持株会社移行し誕生した「燦ホールディング」、さらには広く知名度のある「ベルコ」や「セレマ」といった大手がひしめく葬儀業界だが、ティアはそれらの企業と比べれば、いわば後発組といったところである。

そんななかでティアは、創業より一貫して葬儀価格の完全開示に努めるなど、明瞭な価格体系による葬儀の提供を、同業他社に先駆けて行ったことが広く支持を集めたこともあり、その規模を急拡大させ、現在では上記の大手葬儀会社に続く売上高を誇るまでに。

現在は名古屋市やその近郊を中心に、直営の葬儀会館を集中的に建てるいっぽうで、大阪府などにもフランチャイズ展開を行っており、各地に153の会館(2023年9月期)を有し、さらに同社の中長期ビジョンによれば、今後260まで会館数を増やす目標だということである。

しかしながら、そんなティアに関する不祥事といえば今回が初めてではなく、23年には愛知県内にある「ティア安城桜井」の従業員が、参列者の名前を記した別の香典袋を用意し、すり替えるといった手口で現金12万円を盗んでいたことがバレ、逮捕されるという出来事が。

ちなみに事件が起こったのは、直営ではなくいわゆるフランチャイズの会館で、従業員もそのFC先の社員だったということ。しかしながら、今回の“遺体取り違え”もさることながら、この“香典泥棒”も、葬祭業に従事する者としてはあってはならぬ行為だということで、ティア側としても再発防止に努める旨のお詫びを出す事態に追い込まれたようだ。

先月には大阪でも同様の取り違えが

いっぽうで、今回起きた“遺体取り違え”ということでいえば、今年2月にはティアとは全く別の葬儀会社が、大阪府東大阪市の斎場で同じようなミスを起こしている。

こちらのケースでは、身寄りのない高齢女性の遺体と別の90代女性の遺体を取り違えて出棺したといい、2人の遺体は別の霊安室で安置され、それぞれの部屋の入り口には名札が掛けられていたとのこと。しかし今回のティアの件と同様、事前に氏名などの確認を怠ったことで取り違えたという。

高齢化社会のいわばなれの果てとして、死亡数が俄かに急増していくという「多死社会」をすでに迎えているとされる日本。そんななかで葬儀業界は、ある意味で将来性ある業界ともいえそうなのだが、実際には家族葬や直葬の増加など、葬儀の簡略化あるいは小規模化も同時に進行しており、葬儀一式あたりの費用は減少傾向にあるとのこと。有り体に言えば、忙しい割には儲からないといった状況に陥りつつあるというのだ。

さらに葬儀業界といえば、そうでなくとも近年では深刻な人手不足に直面しており、葬儀場の運営や霊柩車の運行などといった人員確保が追い付かないため、遺族らが葬儀日程の日延べを強いられるといったケースも多々あるよう。

そもそもが特殊な仕事であることもさることながら、その仕事の性格上、激務なうえに休みを取りにくいという点、さらに上記のような葬儀の事情もあって収益が伸び悩む葬儀会社も多く、待遇面の向上も難しいということで、人手集めもままならないというのだ。

短いスパンで連続して発生した、ごく単純な確認ミスによる“遺体取り違え”だが、まさにこういった業界全体の激務化や人手不足に起因する、従業員のパフォーマンス低下やサービスの質の低下が招いたものとも言えなくはなさそうで、それだけに今後も相次ぐ可能性も大いにあり得そうである。

Next: 「マジレスすると、確認する余裕が無い」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー