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【QAあり】ベースフード、通期売上高は前年通期比+50.9%と堅調 FY25に営業利益黒字化を目指す

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2024年4月15日に発表された、ベースフード株式会社2024年2月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

ミッション

橋本舜氏(以下、橋本):ベースフードCEOの橋本です。本日はよろしくお願いします。

弊社のミッションは、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」です。健康に良いものは調理が面倒くさかったり、おいしいものは健康に良くなかったりといったトレードオフが世の中にはあると思います。このトレードオフを解消していくのは、テクノロジーであり、人類の工夫だと思っています。

最高にかんたんで、最高においしく、最高にからだにいい主食を作るために、我々はこのミッションを2016年から掲げており、今後も取り組んでいきます。

Executive Summary

2024年2月期の通期実績をご説明します。売上高は、前年通期比50.9パーセント増の148.7億円となりました。営業損益はマイナス9.0億円で、営業損益率は前年通期比3.8ポイント改善のマイナス6.1パーセントとなりました。

定期注文者数は、前年度末比4.3万人増の20.6万人となりました。コンビニ等を中心とした展開店舗数は、前年度末比1万6,296店舗増の5万1,091店舗となりました。海外事業に関しては、計3ヶ国・地域への新規展開を実現しました。

2025年2月期の通期予想については、売上高190億円、営業損益1.6億円を掲げています。黒字化を優先しながらも、一定の売上高成長を成し遂げていきたいと考えています。

決算ハイライト

先ほどご説明したとおり、2024年2月期の売上高は前年通期比50.9パーセント増の148.7億円となりました。営業損益率は前年通期比3.8ポイント改善のマイナス6.1パーセントとなりました。

売上⾼ハイライト

売上⾼ハイライトです。四半期別で見ますと、第1四半期、第2四半期は売上を大きく伸ばし、第3四半期、第4四半期は上期より伸びが小さいかたちになっています。

要因としては、ご案内のとおり、第3四半期に自主回収を行ったことが挙げられます。新規顧客を増やすより、リスク対策や品質保証に万全の対策を行うことを全社で掲げ、優先して注力した結果です。

国内チャネル別売上⾼の推移

チャネル別に売上高の推移を見ますと、バランス良く成長していることがわかります。⾃社ECでの初回購⼊者にアンケートしたところ、約46パーセントが「小売店で買ったことがある」と回答しています。したがって、小売店が定期購入の認知やトライアル拡大に貢献していると考えています。

加えて、オンラインのマーケティング活動の結果、最初から定期購入やまとめ買いをするのはハードルが高いため、小売店舗で試しているお客さまがいるとわかっています。したがって、相互送客する「win-win」の関係が築けていると考えており、今後もバランスを見ながら、成長していきたいと考えています。

チャネル別売上⾼(⾃社EC‧他社EC)

定期注文者数は、前年度末比に比べ4.3万人増えました。

第2四半期の決算説明会でもお伝えしましたが、第1四半期に定期注文者数が大きく伸び、第2四半期ではあまり増えなかったのは、意図したとおりの動きです。新商品販売のタイミングでマーケティングを集中させたことに加え、夏場にはパンの買い控えが発生するため、このような推移になっています。

一方で、第3四半期、第4四半期の推移は意図したものではありません。自主回収の対応や品質保証のための万全の施策、リスク対策を行った結果が、このようなかたちで表れています。こちらの影響は、2025年2月期第1四半期まで一定程度残ると考えています。後ほどご説明します。

なお、定期購入の解約率は一時的に悪化しましたが、現在は通常どおりに戻っています。

チャネル別売上⾼(卸)

コンビニ等の店舗数も同様の推移を示しています。第1四半期、第2四半期、第3四半期は大きく伸びました。店舗側の都合もあるため、やや波が見られます。第4四半期に関しては、店舗を増やしていく活動を止め、守りに徹する活動を行っていました。

また、自主回収はEC商品が対象であり、コンビニで売っているものにはなんら問題はなかったのですが、やはり不安の声があり、一部の店舗で棚落ちした影響もあります。一方で、配荷率にはまだ拡大の余地があると思っており、拡大活動をすでに始めています。

第4四半期の1店舗あたりの月間売上高は、2023年2月期第4四半期に比べて下がっています。2023年2月期第4四半期は、コンビニ等への導入が始まった初期のタイミングでした。そのため、大都市の1店舗あたりの売上が大きい店舗が多かったのですが、最近は裾野が広がっている影響もあると考えています。

自主回収の影響に関しては回復傾向にあると考えています。我々の商品がよりおいしくなっていることや、商品バリエーションを増やし、商品が店舗に置かれる数や種類を増やしていくことが、引き続き、成長エンジンになると考えています。

海外事業売上⾼

海外事業の売上高は、香港が拡大フェーズに入り、約13倍と大きく伸長しました。香港はそれほど大きくない市場ですので、成長には一定の限界があると考えています。一方で、中国への試金石としての取り組みでしたので、中国で大きく売れる余地があることが確認できたと思っています。

中国に関しては、現地パートナーを含めて、今後の検討準備を進めています。台湾とシンガポールに関しては、香港と似た市場だと思っており、拡大フェーズに進めて売上を伸ばしていきたいと考えています。

利益ハイライト

利益ハイライトです。営業利益率は前年通期と比べて3.8ポイント改善しました。

売上総利益率が2022年2月期から下がっているように見えますが、広告宣伝費のかからない小売店舗への導入が進んでおり、そちらとの取引を卸値で行っているため、売上総利益率が下がっていることによります。

一方で、2024年2月期第3四半期は、自主回収に伴う商品廃棄を行いました。念には念を入れて、商品回収したものもあるため、一時的に廃棄が増えていますが、現在は回復しています。

なお、どの四半期で広告宣伝に力を入れるかは、新商品発売のタイミングや広告マーケットの状況も関係します。したがって、営業利益については四半期での上下の影響はあまり考慮せずに、通期で見ていただければと思います。

利益率改善の取組結果

利益率改善の取り組み結果です。売上原価率については先ほどご説明したとおりですが、それ以外のコストは一通り下げています。

重要なのは、より「かんたんで、おいしくて、からだにいい」ものを目指すことです。「かんたん」には「リーズナブル」という意味も含まれます。コストを下げて生産性を上げることは我々の定常的業務ですので、徹底的に工夫して一通りのコストを下げてきました。来期以降も続けていきたいと考えています。

人件費に関しては、上場前後のタイミングで社員数を増やしたため大きくなっていましたが、現時点では落ち着いています。今後の成長フェーズに必要なメンバーは揃えることができたと考えているため、2025年2月期は極めて限定的な採用になると思います。

新商品及び商品リニューアルの実績

新商品及び商品リニューアルの実績についてです。スライドに記載のとおり、新商品のリリース、あるいは改善を行いました。

もともとはもう少し新商品を出す予定でしたが、自主回収や、それに伴う品質保証の徹底をR&Dの全メンバーで実施し、新商品開発は優先順位を下げました。一方で、2024年3月には冷凍パスタ2種類、4月にはカップ焼きそばをリリース済みですので、今後、その分の実績が出ると考えています。

2024年2月期の新商品にはかなり重要な商品が多く、例えば「BASE BREAD レーズン」は主力のパンであるだけではなく、50代以上のユーザー獲得に寄与する戦略商品でもありました。今後も、このようなユーザー数の拡大に寄与する商品を出していきたいと考えています。

「BASE BREAD リッチ」にも戦略的意味合いがあります。1つの商品を改善したというだけではなく、この改善は関連商品すべてに展開できるものです。おかげで、「BASE BREAD」が、ミルクパンのような普通のパンにより近づいたと考えています。

「BASE BREAD カレー」も大幅なリニューアルを行い、好評価率35パーセント増、販売袋数56パーセント増と、非常に好評を博しています。同時に「BASE BREAD プレーン」「BASE BREAD メープル」「BASE BREADシナモン」も一斉にアップデートしました。

安全安⼼への取り組み

安全安心の取り組みについて、今期の実績をお話しします。自主回収に至った商品は、弊社の中で比較的新しく導入した工場で作られたものでした。「これまで起きていなかったことが、明日起きないとは限らない」と思っています。室内環境も常に変化していますし、工場の環境も常に変化しています。

その中で、未然の防止を徹底していくことが極めて大事だとあらためて認識しました。自主回収の発生後は、基本的な成長への取り組みをいったんストップし、私をリーダーとして、全社一丸となって予防に取り組んできました。

一時的に成長への取り組みをストップしていたという意味では売上の成長は限定的でしたが、そこに表れないような実力は大きく伸びたと考えています。こちらを1つの土台として、安心できる提供を取り入れていける未来を作っていきたいと考えています。

取り組みを工程ごとにご説明します。1つ目の製品設計についてです。我々はナチュラルな商品を非常に大事にしており、何もしなくてもかびないパンを目指しているわけではないのです。

ナチュラルさを大事にする中でも、工夫する余地はあると考えており、菌ごとの特徴を活かして、ピンポイントの対策をポートフォリオ的に重ねていくことで、ナチュラルなよさを活かしつつも制菌性の高い生地を作ってきました。

今後もそのようなことを高めていきます。現在、一段と研究を加速させていますので、この成果もどんどん出ていくと考えています。

2つ目の製造管理・工程についてです。「BASE BREAD」に最適化された状況把握のシステムを構築しました。工場の衛生状態については、これまでも監査で把握していましたが、さらに頻度や精度を上げていきたいと考えています。

どのような先行指標が「BASE BREAD」の不良につながるのかという点に最適化した菌モニタリングシステムを追加導入しています。

3つ目の製品表示についてです。第三者機関の利用やデジタル化が挙げられますが、ここは特に問題になっていませんので、割愛します。

4つ目の包装工程についてです。パッケージデザインと素材を変更しました。密封性の不良は、シールする時に微細なしわが発生したり、輸送の過程で微細な穴が発生したりすることによって起こります。

微細なしわに関しては、デザイン変更と包装機の改修によって自動で検知できるようにアップデートしました。また、硬ければ硬いほど微細な穴が開かないというわけではないため、柔らかさなどのバランスを考慮し、最も開きにくい素材をさらに研究を重ねて解明しています。

5つ目の検品工程についてです。これまでは各工場で検品していましたが、漏れが発生してしまったため、いったん弊社の倉庫で、機械を使って行っています。弊社側でクオリティの制御などをより迅速にできるため、「最後の砦」として弊社の倉庫での検品を導入しました。

6つ目の流通工程についてです。最後の運ぶ過程で、微細な穴が開く可能性があります。箱の入れ方には無限にパターンがありますが、さまざまなパターンを検討して振動実験などを繰り返し、より穴の開かない入れ方を研究して随時変更しています。

このあたりは、今後も当然、力を入れていきます。完全栄養ロングライフパンは、世界に我々しか作れない商品だと考えていますので、それを安全安心に届けられる取り組みを進めていきたいと考えています。

2025年度2⽉期 通期業績予想①

2025年2月期の通期業績予想を発表します。売上高は前年通期比28.2パーセント増の190.6億円を掲げています。営業利益は1.6億円を見込んでいます。

もともと掲げていた予想であり、今後の戦略においても黒字化をいったん達成することが大事だと思っています。それによって、戦略的オプションが増えると考えています。営業利益の黒字化を目指す中でも一定の売上成長をしたいと考えています。

第1四半期に関しては、前期において守りにしっかりと取り組むことを優先した影響を、一定程度受けると考えています。一方で、そこにしっかりと取り組んだことによって、より安心して成長できる基盤ができたと考えますので、第2四半期、第3四半期、第4四半期と、成長を続けていきたいと考えています。

2025年度2⽉期 通期業績予想②

営業利益の黒字化を実現することを優先しますが、我々としては「健康をあたりまえ」にするために、売上規模を拡大していくことも大事だと考えています。したがって、2029年度に売上高1,000億円という水準は下げることなく進めていきたいと考えています。

社会課題

通期決算説明のタイミングで、ミッションなどについてもしっかりと確認していきたいと思います。

売上・利益ももちろん大事ですが、我々は売上・利益のために事業を展開しているのではなく、社会的意義・社会課題解決のために取り組んでおり、それが大きな売上につながるのだと思っています。そのような共通理解を得たいと思っています。

そのご説明の前に、昨年度に自主回収を起こしてしまい、株価を下げてしまったことについては、痛恨の思いであり、とても反省している次第です。ただし、それを将来的な価値提供・社会課題解決に活かしていきたいと思っています。

創業の理由についてお話ししますと、私が小学生の時に、「大人になったら、少子高齢化が進んで社会保障負担が大変なことになる」と小学校の先生から教わりました。その後、28歳でIT企業にて新規事業を担当している時に、この課題が解決されてないことに驚きました。自分がしなければ誰かがしてくれるわけではないと認識しました。

厚生労働省のサイトなどを見ると、次のようなことが記載されていました。社会保障負担を下げるためには健康寿命を延ばし、病気に苦しむことなく、元気に長生きし、最後を迎えることのできる世界を目指していく必要があります。そのためには病気の予防が重要であり、その方法には栄養・睡眠・運動の3要素があります。栄養とは栄養バランスのことであり、「主食・主菜・副菜・もう一品」を中心とした、日本的食生活のことです。

一方で、「主食・主菜・副菜・もう一品」の食生活は専業主婦に支えられていましたが、高度経済成長期を境に専業主婦は大きく減っています。共働きや一人暮らし世帯が増え、その人たちは「主食・主菜・副菜・もう一品」というメニューは食べることができない、あるいは非常に大きな負担となっています。

それならば、一度の食事に「主食・主菜・副菜・もう一品」の素材や栄養素を含めて、テクノロジーを使っておいしくすることができれば、栄養を手軽に摂ることができ、病気を予防しやすくなるため、健康寿命を延ばすことができると考えました。

健康寿命が延びれば、平均寿命が延びます。平均寿命が延びれば、健康寿命が延びます。このようなことが日本社会にとって最も重要であると考えており、現在もそうであると自負して取り組んでいます。

現代における「⾷」のニーズ

日本人に対して「食に何を求めるか」というアンケートをとったところ、健康やリーズナブルさ、簡便性などの回答が多く得られました。「BASE FOOD」を食べているお客さまも、同じことを求めていると感じています。

ミッションにあるとおり、よりおいしく、よりかんたんに、よりからだによくしていけば、多くの日本人に食べていただけるようになり、世界でも受け入れられると考えています。

“かんたん‧おいしい‧からだにいい”を実現する完全栄養の主⾷

「BASE FOOD」は、全粒粉穀物・豆類・種(たね)類・海藻類などを主原料とした完全栄養の主食です。スライド左側に記載の「主食・主菜・副菜プラスもう1品」という定食よりも、さらに栄養バランスが精緻でよいものとなっています。

もちろん、そのような定食を否定するものではなく、定食を食べられる時は食べたほうがよいと考えています。しかし、定食は栄養士が栄養を毎回計算する必要がありますが、「BASE FOOD」は栄養士と同じ方法で徹底的に栄養を計算し、大量生産できるため、より精緻な栄養計算を実現できます。

また、工場で作るため、お店で作るよりも圧倒的に生産性が高く、パンというメニューにより手作り感のあるおいしさも実現しています。

拡⼤する国内ターゲット市場

こちらは少し大きな「絵」になります。日本国内だけでも、主食を合わせると約6.2兆円の市場規模があります。「主食」とは、ラーメンやパスタ、ピザなどの主食を中心とした料理を指します。

日本国内において、食生活の改善に取り組む意欲のある方は6割程度いるというアンケート結果もあるため、そのような意味では約4兆円のコアターゲット市場があると言えます。

おいしさがまったく変わらなくなれば、食生活を改善する意欲のない方にも食べていただけると思っています。

つまり、現在の売上高は、我々が成し遂げられることに対して圧倒的に小さいということです。そのため、我々としてはまだ創業初期段階にいると考えています。

世界的にも、健康格差は重要課題

国連食糧農業機関(FAO)は昨年、「全世界で栄養バランスのよい食生活を送る人を増やし、2050年までにそのような食生活を送れていない人をゼロにする」という目標を掲げました。

低カロリー・低栄養という食事はさすがに減ってきています。しかし、低カロリー・低栄養の食事が減ることと栄養バランスが良いことには大きな差があり、現在はその差を小さくしようとしています。

まさに「BASE FOOD」は、このような目標を達成するための具体的なソリューションであると自負しています。

広⼤な海外市場

海外展開についてです。まずは日本・アメリカ・中国という巨大なマーケットに挑戦することで、海外展開能力を上げていきます。そこから波及すれば、さまざまなところに展開していけると考えています。

R&Dストラテジー

日系の大手食品会社におけるR&D社員の割合は全体の1桁パーセントである一方、TeslaやスペースX、モデルナ等のテック企業では3割を超えると認識しています。我々はフードテック企業ですので、R&D社員は全体の40パーセント以上、ITエンジニアを含めると50パーセントを超えます。

それにより、スピーディな商品開発・改善ができます。私自身もIT企業の出身ですので、データドリブンかつアジャイルな商品開発を進めています。定期購入によってタイムリーに得られる顧客情報から、お客さまが本当に欲しい商品や不満を解消できる商品を開発し、それらをお客さまへタイムリーにフィードバックすることで、テックを確実に活かせるような商品リリースを行っています。

また、従来の産業界が採用してこなかった、分子工学や微生物工学の科学者や技術者を次々に採用しています。これにより、従来の産業界の限界を超えたタンパク質や微生物の理解・操作等が可能になり、完全栄養ではない小麦粉中心のパンと同等以上のおいしさ・食感・風味・香り・味などが実現できると考えています。

さらに、製造の効率化にも取り組んでいます。そもそも完全栄養食は黎明期ですので、配合や工程の合理化に大きな余地があります。それだけではなく、例えばパンの製造は、半導体やロケットのように製造のイノベーションが波及しているわけではありません。デジタル化も同様です。

当社は、それらが得意なメンバーがパン業界において最も揃っています。そのため、パン業界の製造イノベーションやDXにも貢献したいと考えています。また、製造パートナーとともに取り組むことで、原価低減にもつなげていきたいです。

安全・安心の徹底についても、我々だからこそできることがあると思っています。完全栄養ロングライフパンを作れる会社は、世界でまだ我々のみであると認識しています。小麦粉中心で賞味期限が数日である日配パンの品質保証も、過去の不良からつながっているものだと考えています。

一方で、そのようなパンとは別物である完全栄養ロングライフパンの技術・データを蓄積することは、今後の不良を起こさないためにも極めて重要です。

先般の自主回収においても、さまざまなデータやノウハウが蓄積されました。これらは将来、より安心な完全栄養ロングライフパンを作るための重要な情報になってくると考えています。

加えて、品質保証のデジタル化も進めています。先ほどお話ししたとおり、弊社にはITエンジニアが多くいるため、データドリブンな品質保証を実施しています。品質用のデジタルダッシュボードを作り、リアルタイムかつ俯瞰的に品質を保証できるようにしています。

R&Dによるテクノロジーが弊社の成長エンジンであることは、今後も変わらないと考えています。

Social Impact

サステナビリティについてです。温室効果ガスの削減においても、大きな貢献ができると考えています。「温室効果ガスの削減」と聞くと、エネルギー産業を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はそうではありません。

我々は、食料こそが最大のエネルギー産業であると考えています。人間の副次的な行動は電力によって行われますが、本来の人間の行動は当然ながら食料がエネルギー源です。世界中の研究者がまとめたレポートによると、温室効果ガス削減量の大きい解決策のうち、フードロスの削減と植物性中心の食生活は3位と4位にあたります。

これらは単体でも風力発電に匹敵し、EVへの切り替えよりも大きい効果を持っているとされています。合わせると、人類が最も温室効果ガスを削減できる手段と言われています。

弊社は、小麦の胚芽等をおいしくないという理屈で捨てることはおかしいと思っています。濃い栄養がバランスよく含まれている部分ですので、テクノロジーを使っておいしくすることが大事だと考えています。

また、植物性タンパクを豊富に含んだ豆類等においては、テクノロジーを使ってやわらかくふんわりした風味にしたり、豆臭さをなくしたりしています。

その結果、主食でタンパク質が摂れますので、主菜の肉を減らすことができます。これは植物肉とは違ったアプローチですが、本質的なアプローチだと考えています。

さらに、完全栄養ロングライフパンは防災等において必須であり、スタンダードになるべきだと考えています。

能登半島地震でも提供しましたが、消費期限が短いパンであると届けられず、そもそも米は炊ける環境にありません。栄養バランスが悪いと不健康になります。そのような意味では、完全栄養ロングライフパンは世界中のさまざまな防災のスタンダードになるべき存在だと思っています。

作るのは難しいですが、できるだけ安心に、より便利に、よりおいしくする責任があると考えています。

ご説明は以上です。通期決算のタイミングで、弊社が何を行っているのかをご説明できてよかったと思います。本日はありがとうございました。

質疑応答:リコールの影響について

司会者:「リコールの影響は一巡したと言えますか? 影響が続いているという場合は、どのような影響が残っているのか教えてください」というご質問です。

橋本:基本的には一巡したと考えています。しかし、リコールの影響による影響はまだ続いています。

例えば、広告宣伝を止めたことによって広告宣伝の最適化に時間がかかったり、あるいは新規店舗導入の営業活動を止めていたことによって営業活動後の新規店舗導入に時間がかかったりすることなどが考えられます。

質疑応答:競合他社について

司会者:「大手食品メーカーも競合商品を出しており、コンビニでも類似商品が並ぶようになってきていると思います。競合状況をどのように分析しているか教えてください」というご質問です。

橋本:大きく状況は変わっていないと思っています。食品会社による競合商品は昔からあり、活動を積極化しているのも直近だけではありません。弊社の売上高や利益に対する直接の影響は、過去も現在も特にないと考えています。

我々は、完全栄養食の中でマーケットを取り合っているわけではなく、「栄養バランスの悪い食事より、栄養バランスのよい食事の方がよい」という認知を拡大し、それらの食品を食べたことのある人を約6.2兆円や約3.8兆円のターゲット市場に取り込むことが重要だと思っています。

そのような意味では仲間という認識ですので、お互いに商品をより良くしながら進めていきたいと思っています。店舗や定期購入などの違いによって、今期に大きな悪影響が出ることはないと考えています。

一部、「Amazon」等で多少のカニバリゼーションは発生していますが、それが与える営業は、大勢においては限定的だと思っています。

質疑応答:業績予想の未達要因と来期の売上成長要因について

司会者:「第3四半期決算で出された『売上高151億4,300万円』という修正予想を、達成しなかった要因を教えてください。また、業績予想未達にもかかわらず、来期はプラス30パーセント程度の売上成長を果たせると考える理由について教えてください」というご質問です。

橋本:売上高は予想未達ですが営業損益は予想を上回ったため、トータルではニュートラルだと思っています。もちろん、先ほどご説明した広告停止期間によるところもありますが、キャッシュとのバランスが大事だと考えています。

来期にプラス30パーセント程度の売上成長ができると考えている理由には、営業利益率の改善幅が非常に大きいことが挙げられます。それを加味してプラス28.2パーセントという売上成長目標にチャレンジしていますが、過去の推移からすればこの数字は決して大きいものではないため、達成は可能であると考えています。

自主回収に関してマイナスの影響もありましたが、組織強化や製造委託先等を含めた取引先との関係強化、品質保証やリスク対策が強固になったことなど、プラスの影響もありました。

それにより、安心して営業活動や製造活動を再開できています。自主回収によって2024年2月期出せなかった収益が2025年2月期に出ているところもあります。まだ第1四半期が始まったばかりで見通せない部分も多いですが、現時点では達成可能であると考えています。

質疑応答:2025年2月期の売上総利益率改善要因について

司会者「2025年2月期の売上総利益率改善要因は、自社ECが伸びる前提でしょうか? 会員数の前提は何万人なのか教えてください」というご質問です。

橋本:どこまで正確に伝えられるかわかりませんが、基本的には定期購入中心に伸ばすというよりも、定期購入と卸のバランスが大切だと考えています。

赤字を出せない状況ですので、コンビニとも相互送客しながら進めます。定期購入にバランスを寄せることが、売上総利益率を改善する要因というわけではありません。

また、EC会員数の目標は現時点で非公表としていますので、ここでは控えさせていただきます。

2024年2月期は、自主回収のための配送費やさまざまな対策費などが発生したほか、先ほどご説明した工程の改善や製造イノベーションのストップがありました。2025年2月期はそれらに注力できるため、利益率の改善につながると思っています。新商品に関しては、利益率がより高いものを出していきたいと考えています。

質疑応答:2025年2月期の販管費の使い方や広告宣伝費・人件費のバランスについて

司会者:「来期の販管費の使い方と、広告宣伝費率や人件費率のバランスについて教えてください」というご質問です。

橋本:開示している以上の情報は明確にお伝えできませんが、先ほどお話ししたとおり、人件費は抑えめにして新規採用は限定的にする予定です。なぜなら、今後の成長のためのメンバーが一定程度揃ったと考えているためです。

広告宣伝費は大きく抑えているわけではありませんが、より良い商品を作ることで広告宣伝費を効率化するという考えが基本にあり、その方針を継続していきます。

広告宣伝費比率に関しては四半期ごとの波が大きいです。広告宣伝費率の変化によって四半期ごとの営業利益に若干のサプライズが起きることもあるかもしれませんが、そちらは期を通して見ていただければと思っています。

質疑応答:中長期的な売上成長率の見通しについて

司会者:「来期はプラス30パーセント程度の売上成長率ですが、中長期的にはどの程度の売上成長率にする予定でしょうか? また、それを達成するためのドライバーは何でしょうか?」というご質問です。

橋本:2029年度に売上高1,000億円といった水準は目指していきたいと考えています。もちろん、まだ先の話ですのでコミットするというわけではありませんが、達成できると見ています。

売上成長のドライバーは引き続き変わりません。よりおいしく、よりかんたんに、からだによくしていけば、売上は指数関数的に伸びていくと考えています。

先ほどお伝えしたとおり、普通のパンや麺と同様のおいしさや便利さがあり、さらに栄養バランスが良ければ、定期購入者が例えば20万人という水準ではなく、1,000万人や1億人となる世界線が可能だと思っているためです。

そこを線形に伸ばしていけば、お客さまはピラミッドのように広がり、非線形に伸びていくと考えており、それが売上成長のエンジンだと思っています。

そのため、いったん黒字化した後は、赤字にならないようにしますが、一定の利益分は売上成長に優先して充て、安定性や収益性を見ながら成長性を優先していくと思います。

質疑応答:平均購買単価の上昇トレンドと向上要因について

司会者:「顧客1人あたりの平均購買単価が前期比で少しずつ上がっているように見えますが、今後もこのトレンドは続くのでしょうか? また、単価はどのような理由で上がるのでしょうか?」

橋本:さまざまなイベントによる上昇もありますが、よりおいしくなれば継続率が上がったり「さらに多くの個数を買おう」と思っていただいたり、また例えばカップ焼きそばが出たら「カップ焼きそばも買ってみよう」となります。

よりおいしくすることと、バリエーションをより広げることで、平均購買単価を上げることが大事だと考えています。先ほどお話ししたとおり、普通のパンや麺と比べて、そのあたりが同等以上の世界感になるまでは今後も続くと考えています。

一方で、お客さまの数が薄まるということもあると思います。より多くのお客さまに食べていただくことにより、新規のお客さまは最初は少ない個数から始めるため、そこと相殺されながら徐々に増えていくかたちになると思います。

質疑応答:売上の拡大と広告宣伝費との兼ね合いについて

司会者:「現状はD2Cが主な売上であるならば、今後もトップラインを伸ばす場合はデジタル広告に大きく費用を使う必要があると思いますが、どのように黒字化と並行して進めていくのでしょうか?」

橋本:ありがたいことに我々は、小売店とD2Cの二本柱かつ相乗効果になっています。そのような意味では、例えばマーケットのCPA(Cost Per Acquisition)が高騰したとしても、EC限定の会社より影響は限定的だと思います。

一方で、CPAが高騰すれば部分的だったとしても影響は受けることになりますが、コスト削減のトリガーはCPAだけではありません。当然、CPA引き下げるためのさまざまな努力はしますが、CPA以外のコストを下げ続けること、つまり生産性の向上が大事だと思います。

また、店舗数やお客さまが増えていく中において、LTVの向上が重要だと思っていますので、R&Dを進め、より美味しい商品をより広げていくことが大事だと考えています。

質疑応答:ディープテックの活用について

司会者:「バイオ肉などの分野でディープテックが活用されていることはわかりやすいのですが、御社のような粉もの事業においてディープテックがどのように活用されているのか、もしくは今後活用されるのかについて、ご説明をお願いします」というご質問です。

橋本:例えば、パンは発酵して作る食品ですが、人類はビールやパンがどのようなメカニズムで発酵しているかわからない時から口にしていました。現在でも職人技に近いところがあります。

その上、我々が作るのは普通のパンと培地が違うと言いますか、全粒穀物や豆類が素材であり、基本的に小麦粉は使っていないものが多いです。

そのような意味では、発酵について精密に把握することはすごく大事だと思います。実際にどのような微生物がどのように働き、どのような食感や風味に変えていくのかをピンポイントで理解できれば、全粒穀物や豆類が素材であっても、自然発酵と同じような香りや柔らかい食感のパンになると思います。

また、例えばタンパク質の多いパンは基本的に硬く、さらに時間経過によっても硬くなっていきますが、我々のパンはふんわり柔らかく、それが製造後45日間維持されています。そちらもたんぱく質の分子レベルの理解が鍵になっています。

たんぱく質の構造が変化していくことを理解した上で、酵素などを使えば化学的に操作できます。そのような部分をしっかりと理解することがとても大事です。

弊社の商品には、ディープテックと言いますか、物理・化学・生物学などをしっかりと理解して使っており、また、それがただ単に添加物を入れるというお話ではないということです。そうすることでよりナチュラルで、よりおいしいものが作れると考えています。

質疑応答:今後獲得していきたいターゲット層について

司会者:「顧客層の広がりに変化がないように感じますが、今後獲得を強めたいターゲット層はありますか? また、今期すでにパン以外の商品をリリースしている意図は何でしょうか?」というご質問です。

橋本:顧客層は広がっていないように見えるかもしれませんが、けっこう幅広いと思います。年代や性別もそうですが、目的に関してもそうです。

例えばダイエットが一番多いと言っても、基本的に健康を意識する取っかかりはダイエットであるため、「ダイエット✕食事」のようなかたちでカジュアルに入ってきたお客さまが、ダイエットを通じてその他の健康や、より深い健康への関心に移行していくことはカスタマージャーニーとして正しい流れです。

新規獲得のお客さまはダイエット目的であっても、定期購入する中でそれ以外の健康にも興味を持ってもらうことを考えています。

「BASE BREAD レーズン」やもう少し柔らかく食べやすいパンなどの、より上の世代の方々に手に取っていただきやすいような商品や、そのような方々がより買いやすい買い方などについては、開発の余地は大いにあると考えています。施設などで導入いただくことも可能性があると思います。

パン以外の商品を開発していることについて、そもそも我々のミッションは「主食をイノベーションしていく」であり、ミッションを達成するための会社です。それ以外のことは付随した結果だと思っています。パンのイノベーションだけがミッションではありません。

パン以外の商品開発によって、1人のお客さまのクロスセルやアップセルの効果もありますし、新規のお客さま層の拡大も期待できると思います。また、パン・麺・クッキーのベースとなる生地がほぼ同じですので、開発の共通化も一定程度できます。

また、パン業界と麺業界のノウハウが違っていても、同じ材料を使用していればクロスできる部分もあります。したがって、セクションごとに会社がある業界ですが、基本的に我々はそこに横串を刺していくことが、業界への貢献活動であると思っており、そうした波及効果があると思います。

我々のカップ麺を食べていただければと思いますが、弊社のような会社がここまでのおいしさのカップ麺を出せることは、我々の技術力の1つの証左だと思います。驚く方もいらっしゃいますが、ぜひ食べていただきたいと思います。

質疑応答:自主回収の原因と再発防止について

司会者:「自主回収の原因をあらためて説明してほしいです。先ほどご説明のあった対策はすでに実施されており、原則として同じ理由による再発はないと考えてよいでしょうか?」というご質問です。

橋本:基本的なカビの発生条件として、パン自体にカビの菌が付着した上でパンの周りに酸素があれば、カビが生えます。そのため、製造においてカビが付着しないような努力を行っていただいており、もちろん我々も行っています。また、製造後にカビが発生しないよう、気密性やバリア性が悪くならないような工夫も行っています。

自主回収時にもご説明しましたが、今回の原因は菌の付着とカビの発生のどちらもありました。新たに導入した工場で起きたため、我々の商品のような製造難易度の高い、賞味期限の長いパンの製造に必要な衛生環境や衛生対策について、もう少ししっかりと確認すべきでした。また、工場の改善などに積極的に関わるべきだったと思っています。

コロナウイルスと同じように、カビにもいろいろな種類がいます。今回は、ロングライフのパンにおいては問題を起こす程度のカビが付いてしまったこと、我々の制菌力に対して厄介な種類のカビが付いてしまったのだと考えています。

対策としてはスライドに記載したとおりです。工場に存在するカビはゼロにはならないのですが、パンに付着しないようにすることと、密封が破かれないようにすることの2点に尽きると思います。また、そのインテグレーションをデジタル化し、危ないものを早く見つけ、事前に止めることが大事だと思っています。

したがって、同じようなことは起きないと思います。コンビニなどに置いていただいていることからわかるとおり、我々も過去に多くの不良品を出していたわけではありませんが、過去に起きなかったことが、明日も起きない保証はありません。

なんにせよ、大事なことは不良を下げるということよりも、不良を予防していくことだと思います。そのためにもこの対策はある程度、汎用性が高いと思います。

さまざまなカビの種類や、その他のパターンに対してポートフォリオ的に対策が組めていると思っているため、今後、同様の事象だけでなく別の事象が起きる可能性も大きく下げられていると思います。

質疑応答:今後の成長手法について

司会者:「『黒字化によって戦略的オプションが広がる』というご説明がありましたが、具体的にどのようなことを想定されていますか? また、今後大きな投資が必要となる領域はどこだと考えているでしょうか?」というご質問です。

橋本:我々はスタートアップ企業として、上場時の調達などに、第三者割当、つまりベンチャーキャピタルからの調達や投資といった外部からの資金を使い、意図的に赤字を出しながら高成長を遂げてきた会社です。

一方で、現在は一定の企業規模になってきているため、外部からの資金調達がなくても、ミッション達成に向けた取り組みが続けられる状態を確保することが大事だと思っています。

したがって、今後は第三者割当で資金調達することも、第三者割当の資金調達をせずに成長することも可能になると思っています。

大規模な調達を行う予定があったり、大規模な投資を行う予定があるかと言いますと、基本的に弊社は「大規模に費用を使ってしばらくは使わない」というモデルではなく、常に改善を繰り返しながら成長していくモデルだと思っています。

例えば、売上が150億円程度で赤字ということは、逆に言うと150億円以上を使わせていただいているということになるため、10億円を別で調達するような会社よりも、現状で多くの費用を使えている状態です。

そのため、通期予想のとおりに一定の黒字を出した後は、黒字の中で相当の金額を研究開発などでも使えると思います。未来のことはわかりませんが、今のところ大規模な額を一気に使うような予定があるわけではありません。

質疑応答:今後の新商品について

司会者:「今後の新商品は、どのようなものがありますか? 今売れているパンに匹敵するような、売れ筋になるものはどのようなものが考えられますか?」というご質問です。

橋本:今後の新商品については、出した際のニュースバリューを維持するために「何を出します」と言うことはできないのですが、パンが成長エンジンということは変わらないと思います。

先ほどご説明したとおり、研究開発や将来的な意味合いでは、パンに限定する必要もないと思いますが、一方で商品開発においては、パンを優先してよいと思っています。具体的なことはお話しできませんが、楽しみな商品が控えています。

よりおいしくするもの、今までと違う売り方をするもの、パンの中でも今までと少し違った食べ方をするものなどがあります。また、例えばシニアの方により受け入れられるような、まったく違う製品を立ち上げることも考えられます。このように、成長可能性にヒットするようなさまざまな商品を試していきたいと思います。

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