円安は全体としてプラスとした日銀の大罪
異次元の金融緩和で円安が進み、株価も上昇したのですが、その一方で国民は高い輸入品を買わされることになり、日本経済の採算が悪化、国内所得はかえってマイナスになりました。
しかも金利は長短ともになくなり、預金者は金利収入を奪われたばかりか、利ザヤを得られなくなった銀行の収益悪化が、預金者にしわ寄せされました。
コスト削減と言って銀行は店舗やATMを減らし、銀行サービスが劣化しただけでなく、振込手数料が引き上げられ、新規の通帳発行も有料になりました。
YCCによる大規模緩和が結局預金者に付け回しされる羽目となりました。日銀が国債やETFを買い占めたために、市場の流動性が減り、市場機能が低下しました。
こうした副作用満載の異次元緩和、円安誘導に対しても、黒田日銀総裁(当時)は「円安は全体としてみれば日本経済にプラス」と言って放置しました。
この10年の積み重ねが、日米で5%以上開いた政策金利差、150円越えの円安をもたらしました。アベノミクスによる円安誘導の大罪が問われています。
甘いハンデで鍛錬をさぼった日本企業
円安で企業は容易に利益を上げられるようになったのですが、かつてシングルハンデの実力を持った日本企業も36の甘いハンデをもらって楽勝となったため、練習をさぼっているうちに力も落ちてしまい、アジアの新興国に追い上げられました。
円安でかえって、日本の競争力は低下しました。
80年代末に世界の株式時価総額トップ10は日本企業(特に銀行)がほぼ独占していましたが、いまやトップ10に入る日本企業は消えました。
気が付けば中進国
80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられた日本も、昨年のGDP(国内総生産)はドイツにも抜かれて4位に後退、近いうちにインドにも抜かれそうです。
1人当たりGDPではさらに悲惨で、IMFによる予測では23年の1人当たりGDPはトップのルクセンブルクが13万5,000ドル余りに対して、日本はその4分の1の3万4,000ドル弱で世界第34位に落ちました。キプロスやバハマにも抜かれました。
80年代には世界経済のリーダー国の1つと見られましたが、今日ではOECD38か国の中でも21位と下位に甘んじるようになり、世界の中進国になり下がりました。円安で日本経済の大安売りをした結果です。
この円安が続くと、1人当たりGDPは間もなく韓国、台湾にも抜かれます。