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売れるネット広告 Research Memo(7):D2C業界のリーダーとして業界の悪癖を正す

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■売れるネット広告社<9235>の業績動向

2. 「不正注文」対策
もとよりRM財務各付で「A」評価を受けるなど財務体質が強かったこと、D2C(ネット通販)のリーダーとして業界全体の発展に尽くそうと考えていたことから、上場を機に「不正注文」の撲滅とM&Aの強化を重点施策として推進する方針であった。M&Aの強化については後述するが、「不正注文」については、抜本的な対策を徹底的に講じることとした。

「不正注文」とは、転売目的や詐欺目的で商品を購入しようとする悪質な注文のことである。購入のハードルを下げるため大きく割引した初回の特別価格と2回目以降の価格に大きな差があると、「転売屋」が転売目的で不当に商品を買い占めたり、「初回ピッカー」が初回価格狙いで解約したりすることが多く発生し、D2C(ネット通販)事業者の経済的損失やブランド価値の毀損につながることもある。こうした「不正注文」は年々増加しており、特にここ数年はターゲットとなる商品名やURLが掲載された「転売マニュアル」が作成されるなど手口も組織化・巧妙化、「不正注文」の発生率も2023年7月~9月で前年同期比2倍以上となったようだ。この結果、注文の3割が「不正注文」となるクライアントも現れ、業績が圧迫されたクライアントの中には事業撤退に追い込まれたものも複数あるなど、業界全体の大きな課題となっている。

「不正注文」が発生する最大の要因は、初回の注文と2回目以降の注文で価格差が大きくなることにあるため、同社はランディングページの仕様を変更するとともに、全クライアントに対して、初回の割引率を縮小し、リピートしやすいよう半永久的にリーズナブルな割引を継続するビジネスへの転換を提案した。こうした提案を受け入れたクライアントが7割~8割あり、そうしたクライアントの多くで「不正注文」が激減したようだ。その結果、低採算の特別価格がなくなり、LTVが1.5倍に向上、配送効率が改善するなどクライアントの収益率は改善し、またブランドも維持でき、この点で「不正注文」対策は大成功だった。

しかし、初回割引率の縮小により申し込みのハードルが上がったことで、コンバージョン率・コンバージョン数が減少するという副作用が発生した。特にマーケティング支援サービスは成果報酬型のため影響が大きく、また同社が当初副作用を楽観視していたこともあり、第2四半期の業績の大きな未達につながったのである。主力のネット広告/ランディングページ特化型クラウドサービスも業績は未達となったが、その後は、A/Bテストを徹底的に実行したことで第2四半期終盤から第3四半期にかけてコンバージョン率が回復に転じ、下期以降中期的な業績回復の足場固めができつつあると言える。このように半年間の業績を犠牲にしたが、「不正注文」を激減できたという点で、同社の経営判断は中長期的に正しかったと言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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