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いい生活 Research Memo(5):2024年3月期第3四半期も増収、平均顧客単価は引き続き上昇傾向(1)

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■業績動向

1. 2024年3月期第3四半期の業績概要
いい生活<3796>の2024年3月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比4.0%増の2,051百万円、EBITDAが同2.5%減の468百万円、営業利益が同25.2%減の110百万円、経常利益が同6.8%減の138百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同5.3%減の88百万円となった。

2024年3月期第3四半期においては、主に不動産賃貸管理事業を中核とする比較的規模の大きなエンタープライズ企業へのSaaSの導入に注力した。顧客規模の大型化に伴い、ソリューション売上を構成する導入支援プロジェクトについて、全体として要件の複雑化、案件規模の大型化、期間の長期化の傾向にあり、そのためソリューション売上については、前年同期比で減収となった。一方で、エンタープライズ企業への同社SaaSの新規導入や、既存顧客へのアップセル・クロスセルなどにより、SaaS の月額利用料について平均顧客単価は引き続き上昇の傾向にある。そのため、SaaSの月額利用料収入を中心とするサブスクリプション売上は好調に推移した。

売上原価は前年同期比8.9%増の872百万円になった。理由として、同社はサービスの基盤となるインフラを米ドルで支えるため、最近の円安により費用が増加したことによる。加えて、新卒採用の増加とプロジェクトの大型化に伴い、外注費も増えた。販売費及び一般管理費においても、同4.3%増の1,067百万円になった。これは、積極的な採用により、マーケティング、セールス、サポートの体制を強化することにより、人件費や求人関連費が増加したためである。結果として、EBITDAは同2.5%減の468百万円、営業利益は同25.2%減の110百万円になった。一方で、円安によるリスクを軽減するために行った為替予約により為替差益が発生し、経常利益は同6.8%減の138百万円と微減であった。

(1) 利用法人数・店舗数
有料課金法人数は前期末比17法人増加の1,507法人、サービス利用店舗数は同30店舗減少の4,523店舗となった。多店舗展開を行っている顧客が解約したため、第2四半期、第3四半期において、第1四半期に比べ、サービス利用店舗数が多少減少しているものの、有料課金法人数は過去最高となり、引き続き着実に伸びている。

(2) KPI
同社は、1顧客当たりの平均月額単価である「ARPU」と特定の期間(月単位)における顧客の解約率である「MRR解約率」をKPIとしている。「ARPU」は、通信業界で事業における健全性や収益性を評価するために使用され、顧客から収益を最大化するための戦略を立てるための指標としても活用し、「MRR解約率」は、どれだけの顧客を失っているか、事業の持続可能性や収益予測を図るために用いる。

(a) ARPU
四半期毎の売上高とARPUは、2022年3月期第2四半期から一貫して上昇傾向にある。同第2四半期の売上高は591百万円、ARPUは119千円からスタートし、2024年第3四半期における四半期の売上高は712百万円、ARPUは136千円へと成長した。特に、売上高は2023年3月期第4四半期に723百万円とピークに達した後、2024年3月期第1四半期に少し落ち込むものの、その後は回復している。この成長は、顧客基盤の拡大や1社当たりの収益向上によるものと見られ、企業が提供する製品やサービスの質の向上、マーケティング戦略の成功などが要因として考えられる。売上高が2024年3月期第1四半期に一時的に下がった理由については、多店舗展開を行っている顧客が解約したためと見られるが、その後は回復傾向にある。

(b) MRR解約率
同社のMRR解約率の推移を見てみると、2024年3月期第3四半期末のMRR解約率は-0.59 %(前年同期末は0.38%)であり、過去10四半期の中で、2022年3月期第4四半期に次ぐ2番目の高水準を維持している。2021年3月期第3四半期以降のMRR解約率は1%以下である。四半期によってはMRR解約率がマイナスで表示される場合もあるが、これは当月に解約となったMRRよりも既存顧客に対するアップセルによって増加したMRRが上回っていることを示している(ネガティブチャーン)。同社のような低いMRR解約率は、高い既存顧客の維持率や満足度を保っており、今後の持続的な収益と成長につながると言える。

(2) 人員構成
人員構成については、2023年12月末時点で、コーポレート部門が13人(2022年12月末比1人減)、導入・運用支援サービス部門が25人(同8人増)、カスタマーサクセス&サポート部門が24人(同2人減)、セールス&マーケティング部門が63人(同7人減)、エンジニアが72 人(同5人増)となり、合計197人の体制となっている。人材獲得の競争は厳しいものの、同社としては必要な人材の採用に成功しており、新入社員も順調に加わっている。システム開発は社内で対応しているが、人手が足りなくなった場合は、業務を外部に委託してリソースを補う準備ができている。人件費の上昇は今後ある程度の影響を及ぼす可能性はあるものの、サービスの価値を高めることで対価を調整し、価格改定も視野に入れつつ、この問題に柔軟に対応していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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