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中国人民解放軍が「南シナ海」にこだわる軍事戦略上の理由=小川和久

そもそも中国の弾道ミサイル原潜の行動可能深度は?

これだけを聞けば、米国が攻撃しようとしても3,500メートルの深海に逃げ込めば助かるし、その深さなら探知できないという印象をばらまいてしまうからです。

いかに深い海域であっても、潜水艦が作戦行動できる深度は400~600メートルといったところです。冷戦期、旧ソ連がチタンで建造したアルファ級という攻撃型原潜がありましたが、1,200メートルまで潜れるとされる一方、その深度に逃げ込んでも反撃するための魚雷が水圧でつぶれてしまうために使えず、結局、実用的ではないということで退役することになりました。

特に、弾道ミサイル原潜の場合は巨大な弾道ミサイルを直立状態で搭載するミサイル区画が潜水艦の構造を弱める問題があり、あまり深いところでの行動は前提とされておらず、中国の弾道ミサイル原潜は深度300メートルがせいぜいと見られているのです。

それでは、南シナ海東部が弾道ミサイル原潜の配備海域として望ましいとされるのはなぜでしょう。

最も大きな理由は、かなりの海域が水深200メートル以下とされ、透明度も高く、潜水艦を海中で行動させるのに適さず、上空から発見されやすい南シナ海にあって唯一、弾道ミサイル原潜を遊弋させられる深度を確保できる海域だからです。

南シナ海の水深が浅いことについては、特に中国が主張する「領海」内を10月27日に航行した米海軍のイージス艦ラッセンが対潜ソナーを作動させていなかったとする米国内での報道は、水深の浅い海域という条件を無視している面があります。それは、対潜ソナーを使いにくい場合がある、中国の潜水艦も海中からイージス艦を追尾できない、もし潜水艦がいてもイージス艦と連携をとっていた米海軍の対潜哨戒機が上空から探知できる、というものです。

潜水艦に関するお話は、機会を見てさせていただきたいと思いますが、基本的には私の事実上のデビュー作「原潜回廊」(講談社)の時代と変わっていないようで、30年前を懐かしく思い出しています。

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NEWSを疑え!』(2016年11月30日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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