民主党はバイデンを正式な候補として宣言
しかしバイデン陣営は、2年間隠し続けてきたバイデンの衰えぶりが隠せなくなっても、引き下がるつもりはないことを明らかにした。選挙キャンペーン・スポークスマンのローレン・ヒットは、討論会のパフォーマンスについて質問され、バイデンは辞任するつもりはないと強調し、討論会後の1,400万ドルの資金調達額と、29日にノースカロライナ州ローリーで行われた選挙集会を指摘し、「彼はノースカロライナ州での集会で、熱狂的な観衆を前に非常に力強いスピーチをしたばかりです」と言った。
また、29日の午後、バイデン陣営のコミュニケーション・ディレクターであるマイケル・タイラーは、エアフォース・ワンの中で「ジョー・バイデンが候補者だ」と明確に述べた。
そして、「民主党全国委員会」は早ければ7月21日にもバイデンを正式に大統領候補として指名する可能性があるようだ。これで、党内からも上がっているバイデンの後任候補の可能性に終止符を打つことを狙っている。「民主党全国委員会」は7月16日から21日にかけて数回の委員会を開き、事実上の投票のためのルールと手順を最終決定する予定だ。「フォックス・ニュース」の取材に応じた民主党関係者2人も、7月21日が候補日であることを認めた。
2024年の大統領選挙の候補者は、8月19日から21日にシカゴで開催される「民主党全国大会」で指名される予定だ。すでに各州で予備選が行われ、バイデンが勝利しているので、「民主党全国大会」の各州の代議員は予備選の結果通りの投票をしなければならない。
しかし、「民主党全国大会」の前にバイデンが辞退した場合、立候補した複数の候補者から代議員が自由に選ぶ「オープンバレット」という投票になる。そうした状況になると誰が民主党の候補者になるのか、予想がつかない。
このような状況を回避し、民主党をバイデン支持で結束させるために、「民主党全国委員会」を開催し、民主党のバイデン支持を固める狙いだ。
トランプの勝利に対する民主党の恐怖は大きい。実質的にパニックになっている状況だ。民主党は左派と右派で大きく分裂している。そのため、いまから候補者を変更しようとしても、左派と右派で納得する候補者を擁立することは極めて困難である。このような状況なので、バイデン支持で民主党を固め、それで選挙を戦い切ることしか道がないというのが、民主党首脳部の認識なのだ。
民主党左派の重鎮で若者の圧倒的な支持があるバーニー・サンダース上院議員も次のように言い、バイデンの支持を呼びかけている。
「大統領選挙は、誰が最高のパーフォーマーなのかを決めるグラミー章ではないのだ。アメリカ国民の生活に大きく影響する人物を選ぶのだ。みんな少し大人になって、バイデンを支持してもらいたい」
政治的病理とこれから始まる大混乱
いまの状況はどう考えても普通ではない。大混乱した2020年の大統領選挙でも、認知症の疑いのある人物を大統領に押すような声はなかった。さまざまなスピーチを比較するとはっきり分かるが、2020年のバイデンは2024年のバイデンではない。2020年の時点では、バイデンははるかに覇気があり、思考と判断もいまに比べるとずっと早い。
次のビデオを見ると、その差は明確だ。英語のビデオだが、2020年のバイデンと2024年のバイデンの違いがよく分かる。
アメリカを代表する調査報道の記者、シーモア・ハーシュはバイデンの能力の衰えは、この半年間で加速したと語っている。ハーシュの取材では、半年前にバイデンから家族に電話があり、ホワイトハウスがコントロール不能になっていることを嘆いていたという。おそらく、すでにこのときには、バイデン政権の閣僚を取りまとめる能力がなかったのであろう。
普通のアメリカなら、バイデンはとっくに引退している。実際、彼が大統領になることはなかっただろう。バイデンのような人物が最高権力者の座につくことは、どうみてもアメリカの政治的、文化的な病理であるとしか言いようがない。







