東京23区において家庭ゴミ収集の有料化が検討されているとの報道が、大きな波紋を呼んでいるようだ。
現在、23区内で出た可燃ゴミや粗大ゴミ、不燃ゴミなどは、焼却や破砕といった中間処理がされた後に、東京湾中央防波堤の外側にある廃棄物の最終処分場に埋め立てられている。
しかし船の航路を確保することなどを想定すると、最終処分場をこれ以上拡張するのは難しいとのことで、約50年後には23区から排出されるゴミの処分先がなくなってしまう恐れがあるという。
そこで、現在の処分場を長く使うために23区と東京都は、ゴミ排出量の削減に効果のある家庭ゴミの有料化を導入する検討を行っているということ。現在多くの区において、専門家や住民代表らで構成される委員会で、ゴミ削減に向けた家庭ゴミ有料化を検討することが決定しているという。
家庭ゴミ収集の有料化で負担はどれだけ増える?
東京都内におけるゴミ処理の状況だが、23区以外の多摩地域では1998年に青梅市が家庭ゴミ収集を有料化したのが嚆矢となり、2001年には都の市長会において、全市で有料化を目指す方針を表明。
その結果、現状では檜原村以外のすべての市と町で、家庭ゴミ収集の有料化が導入されているとのことだが、実際、2000年に家庭ゴミ収集の有料化に踏み切った日野市では、それまで市内に7000個以上あったというダストボックス(ごみ収集箱)を同時に廃止したことも功を奏し、導入後の家庭ゴミ収集量は導入前と比べて48%も減少したという。
人口400万人以上と多くの人々が住み、それ相応に大量のゴミが排出される多摩地域だが、23区とは異なりゴミを海に埋め立てることができず、内陸部にある処分場に埋め立てていたものの、それらもスペース的にかなり限られるといった状況。
それゆえ、処分場をできるだけ長い期間使い続けるためには、ゴミ減量が急務だったということで、早い段階でゴミ収集の有料化が進められたようなのだ。
そんななかで、家庭ゴミの無料での収集が続いていたのが23区。逆にいえば、これまで同地域において埋立地の限界といった問題は、多摩地域と比べるとさほど深刻視されていなかったとも言えそうなのだが、それも今回の報道にあるように、いよいよ先が見えてきたということで、ここに来てゴミ減量を目的とした収集の有料化が検討され始めることに。
環境省によれば、日本人が一日当たりに出すゴミの量は約890g、一年間では約325kgにのぼるという。これを45Lのゴミ袋で出すとなると、45L袋の排出重量の平均は燃えるゴミで約4kgということなので、都合81袋は必要となる。
有料ゴミ袋の値段は各自治体によって微妙に差があるのだが、例えば調布市では、45Lのもの(10枚入り)が840円で販売されているので、ざっくりと計算すれば一人当たり7000円弱、4~5人家族の世帯なら3万円前後は有料ゴミ袋代に消えるということで、仮に23区内で家庭ゴミ収集の有料化が導入されれば、同程度の負担増が見込まれそうというのだ。
「それならプロジェクションマッピングやめろ」との声も
このように、ある意味では“増税”とも捉えることもできそうな今回の話なのだが、当事者である東京23区の住民からは、やはり否定的な反応が続出。
都知事選が今年7月に行われた直後というタイミングでの話の出方もさることながら、最近では予算7億円とも18億円とも言われるプロジェクションマッピング事業に対して「無駄遣い」だという批判が殺到しているなかで、都民に対して新たに負担を強いることに、怒りや呆れの声が飛び交うといった事態になっているというのだ。
有料化の前に無駄なプロジェクトマッピングやめたら
最終処分場あと50年で満杯か…東京23区と都が「家庭ゴミ有料化」検討
https://t.co/o5VmL6cVyi— himuro (@himuro398) September 16, 2024
プロジェクトマッピングで遊びなから都民からはゴミ処理費有料を検討。選挙の時はおくびにもださず。
— カズン (@UzGtsbn) September 17, 2024
え、ゴミの有料化とは驚き‼️有料化してもゴミはでる、もっと抜本的な対策が必要です。その一方で、 アホなプロジェクシヨン・マッピングに加えて、お台場に世界一の噴水を作るという、まさかの無駄遣いを小池都政は打ち出しましたよ❗(怒) https://t.co/ga6w8hwpdv
— 中野毅 (@ts_nakano) September 16, 2024
いっぽうで、23区民にとってゴミの無料収集は、多少家賃が高くとも23区内に住むことの大きなメリットのひとつだと捉えていた向きもかなり多いようで、それが無くなってしまうことへの不満を訴える声が目立つところ。
しかしその反面で、すでにゴミ収集が有料化されている地域の人々からは「日本でまだ無料でゴミが捨てられる地域がある事に驚き」「今までが贅沢過ぎたんだよ」といった声が噴出するなど、これまでの23区民に対する“優遇”への批判的な視線も多いようだ。
ゴミ収集が原則無料っていうのは東京23区に住むメリットの1つだと思ってたんですけど、それがなくなるのはちょっとなぁ、と思う23区民。
— Sho INOUE (@shoinoue) September 17, 2024
日本でまだ無料でゴミが捨てられる地域がある事に驚きなんですけど!
しかも東京とは…
最終処分場あと50年で満杯か…東京23区と都が「家庭ゴミ有料化」検討 既に実施の立川市は可燃ゴミ排出量が前年度比17.5%減(FNNプライムオンライン)#Yahooニュースhttps://t.co/DM4dH1IQ8D
— ふちゃぎ (@pasofinon) September 16, 2024
同じ東京都なのにゴミ袋は23区内は無料、多摩地区は有料
都内でも格差があったんだから区内家庭ゴミ有料化ぐらい妥当でしょ
今までが贅沢過ぎたんだよ— 立日八 (@liriba111217) September 17, 2024
関係者からは、昨今の物価高騰のなか、都民に新たな負担を強いるのは如何なものかという意見も出ているようで、今回の件は慎重に検討が進められる模様。だが、実際すでに最終処分場の限界が見えている点、またなによりも他地域ではゴミ袋が有料なのが常識になりつつあるといった状況からも、23区も将来的な有料化は避けて通れないといったところのようだ。
Next: 「23区民様は多摩地区民どもと違って…」