fbpx

金価格、史上最高値からどう動く?まだ買い?中国の大量買いと米大統領選の影響を分析=斎藤満

中国の金買い

中国は現在、世界最大の金産出国となっています。2022年では330トンの生産で、ロシア、オーストラリアの320トンを上回り、世界一となっています。そのうえでさらに人民銀行は大量の金を購入、22年には年間で220トンもの金を買い入れたと言われます。そして金準備が昨年3兆2,000億ドルに達したと言われます。

人民銀行が金保有を増やしている裏には、中国経済のドル依存からの脱却を考えていることがあります。現在の中国経済は事実上のドルリンクで、金利設定も国債発行量も米ドルに縛られます。

中国経済が不振で景気刺激をしたくても、FRBが金利を下げないと人民銀行は利下げができず、国債発行も米国の緩和なしでは国内でクラウドアウトが生じ、民間部門が債券発行できなくなります。

こうしたドルからの縛りをなくし、自由な政策運営をするためには、人民元がドルに縛られない国際通貨になるか、金の裏付けで人民元が信用力を付けるしかありません。規制だらけの人民元が国際通貨になることは望むべくもなく、今は金保有を増やし、金兌換で人民元の信用力を高めるしかありません。

3.2兆ドルの金準備ではまだ「担保」には不十分で、IMFが適正水準とする3.6兆ドルも下回っています。

また民間部門も富裕層は人民元を信用しておらず、資産をドルに移していますが、政府が米国と対立を強めると、中国人保有の米国内のドル資産が凍結されたり没収されたりするリスクがあり、絶対的な安全資産金にシフトする動きが見られます。民間の金需要も高まっています。パンダ金貨用の需要も高まっています。

官民問わず、中国の金買いはまだしばらく続きそうです。

地政学リスクは収まらず

次に金需要を高めている地政学リスクについてみてみましょう。

これには来週の米国大統領選挙が関わってきます。ハリス氏が勝てば、いまの戦乱はしばらく続く可能性があります。イスラエルの暴挙に批判が高まっていますが、米国ではユダヤ教徒、ユダヤ資本の影響力が大きく、米国政府の「イスラエルとともにある」姿勢は変わりません。ネタニヤフ首相はこれを利用しています。

ウクライナ戦争についても、直接ロシア領内を攻撃しない戦争形態をとるため、米国やNATOがウクライナ支援を続けても、ロシアが疲弊して止めるまでは戦争は終わりません。ロシアの疲弊は進んでいたのですが、北朝鮮と軍事同盟を結び、北の兵力、ミサイルを使えばまだしばらくは戦える算段です。

一方、トランプ氏が勝てば、ウクライナもイスラエルも直ちに戦闘を終わらせると豪語しています。トランプ大統領はウクライナへの支援をやめ、NATOにも圧力をかけ、ロシア優位の形で停戦を結ばせる可能性があります。米国がプーチン大統領につけばNATOとしても手の打ちようがなくなり、ウクライナは親ロシア地域を失うことになりそうです。

NATOとしてはロシアからの欧州攻勢に備えて欧州資金でNATOの強化を図り、一方で中国の出方を抑えるために、NATOのアジア太平洋への監視力を強化するくらいにとどまりそうです。

イスラエルにはトランプ政権が一段の支援を与え、中東でのイスラエルの支配力が強まり、エルサレムには第三神殿の建立が進むことになり、イスラムとのバランスが大きく傾き、新たな不安の種をまきます。

またトランプの支援を受けてロシア・北朝鮮同盟は朝鮮半島を北主導の支配体制にすべく、韓国との戦闘が展開される懸念があります。戦争を拡大して世界の分断を企てる勢力は、ウクライナ、イスラエルに代わる戦乱の地を求めます。それが朝鮮半島になるリスクがあり、中国も日本も大きなリスクに巻き込まれます。

地政学リスクからの金買いは収まりません。

Next: 金価格の上昇余力は?投資家が注視すべきこと

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー